あまりにも達筆なフランス語の絵葉書
さんちかタウンの古書販売会で古い絵葉書を買ったことは、前に記事にした。
kuromitsu-kinakochan.hatenablog.com
そのなかの1枚が、あまりにも達筆なフランス語で書かれており、ところどころしか読めなかったので、プライベートレッスンをとっている、フランス人のムッシュー先生にたずねてみた。
ところが、ムッシュー先生でも全解読はできなかったのである。まぁ、驚くにあたらないか。私だって、日本語であっても、大正時代に書かれた続け字は読める自信はまったくない。
絵葉書には何が書かれていたか?
わかったことは、この絵葉書を書いた人は、軍の通信制度で投函しているから、男性で宛先はジロンド県に住む、アントワネット夫人。自分の健康状態がきわめて良好であることを知らせたもので、二人の関係性は不明。ただし夫婦や恋人ではないということ。
ちょい残念。
絵葉書のカリカチュアが語ること
一方、絵葉書のカリカチュアでは多くのことを教えてもらった。左側の松葉杖の人物はドイツ皇帝ヴィルヘルム2世。右側の椅子に座っている人物は、オーストリア皇帝のフランツ・ヨーゼフ1世。第一次世界大戦下では同盟関係にあったが、オーストリア皇帝のほうがドイツ皇帝より格が上だったらしい。
フランス軍にボコボコにされたドイツ皇帝にむかって、オーストリア皇帝がいう。
「可哀そうなヴィルヘルム、彼らにやられちまったみたいだね」
「ああ!なんでもありませんよ。これからあなたにボコボコにされることを
思えば!」
当時のフランスでは、フランス軍の連合軍がいかに強く、敵対する同盟軍(ドイツ、オーストリア、オスマン帝国など)がどれほど弱いかを喧伝するためにプロパガンダ政策として、このような絵葉書が多くでまわっていた、とのことである。
「天国でまた会おう」は第一次世界大戦が背景のゴンクール賞受賞作
果たして、この絵葉書を出した男性は第一次世界大戦を生き延びたのか? にわかに興味がでてきた。というのも、私は第一次世界大戦と戦後を舞台にした「天国でまた会おう」を読んで以来、この戦争に関する記事には必ず目を通すからだ。
「天国でまた会おう」は、戦争に運命を狂わされた二人の男性の戦後物語。泣き虫で弱気なアルベールは、戦場で死にかけていたところ、エドゥアールに助けられる。エドゥアールはアルベールを助けたばかりに、顔面に砲撃を受け、命はとりとめたものの、二度と人目にさらすことのできない顔になってしまった。戦後、生活に困窮しながら一緒に暮らす二人だが、エドゥアールが芸術の才能を生かし、あることを思いつく。それはフランス史上、最大の詐欺事件へとつながっていく・・・
この小説は歴史ものであり、戦争ものであり、ミステリーの要素もあり、登場人物のキャラもよくわかり、ピエール・ルメートルさんの代表作だと思う。
ピエール・ルメートルさんと言えば、「その女アレックス」がよく知られているが、ありゃ私に言わせればグロテスク。絶対に「天国でまた会おう」がおすすめ!映画もなかなかよくできている。