108歳、コレット・マゼさんの演奏風景にビックリ
先日、久しぶりに書店に並んだ新刊を眺めていると、日本で最高齢ピアニストとして話題の室井摩耶子さんのエッセーが積まれていた。御年、100歳を超えて演奏と出版とはすごいなぁ、とただただ感心するばかりだが、このほど夫が教えてくれた108歳のピアニスト、コレット・マゼ( Colette Maze ) さんの演奏風景を、初めてまともにYouTubeでみて、「上には上がいる」と思った。(それまで失礼ながら、大したことないだろうと思っていたので、調べる気にならなかったのだ)。
それはもう、「〇〇歳のおばあちゃんがドビュッシーを弾いた!」のような高齢をウリにしたような次元の演奏ではないからだ。よほど筋肉というか、腱が柔軟なのか、手指が鍵盤を這うように動くのをみていると、あきらかに65歳の私にないものをお持ちのように感じる。それはまず、「la souplesse=しなやかさ」ではないかと思うのだが。
ちょっと長いが、2021年4月に撮影された動画がいちばん新しいようなので下に貼っておく。冒頭の演奏部分だけでも、チラ見していただきたい。
コレット・マゼさんの生い立ち
コレットさんは1914年6月16日パリ生まれだから、現在108歳ということになる。同年の7月28日に第一次大戦が勃発している。
日本のドビュッシー研究の、草分け的存在の安川加寿子さんが、1922年生まれだから安川さんより8歳もお姉さんなのだ。
かなりのブルジョワの家に生まれたコレットさんは、5歳でピアノを始める。厳格な両親の教育から、なかば逃避するようにピアノに夢中になり、15歳でエコールノルマル音楽院に入学。アルフレッド・コルトーの指導を受ける。
卒業後は後進の指導にあたるも、第二次大戦勃発で看護師となる。戦時中はピアノが弾けなかったため、テーブルをピアノ代わりにエア練習していたようだ。
戦後はピアノ教師に復職したが、84歳のとき、息子さんの強い勧めがあって初めてアルバムを発売、現在計6枚のアルバムを世に出している。
通算すると100年もピアノを弾いている、ということで世界中で話題になっている。
コレット・マゼさんの日常
やっぱり、フランス人だなと思ったのは、「シャワーは毎日しないが、ピアノは毎日弾く」とおっしゃっていたこと。
また別の動画では、息子さんが、「母は多くは食べられないのですけれど、チーズ、チョコレート、そしてワインを好んで飲んでいます」と言っていた。
室井摩耶子さんはステーキを常食していると言っていたので、肉は高齢者にとってマストかと思っていたが、そうでもなさそうなので、よかった。だって毎日ステーキなんて、家計がもたない。
トシをとったらテクニックの向上は望めないが
現実を突きつけられたように思ったのは、インタビュアーが、「毎日の練習で技術が向上すると思いますか?」とたずねたのに対し、即座に「ノン」であったこと。
日々の鍛錬で向上、改善が見込めるのは感性や知恵であってテクニックではない。「私たちはアクロバットを求められているのと同じだから」。たぶん、そうだろうね。ランランとかユジャ・ワンのを見ていると、アクロバットかもしれないね。
よい演奏家になるためには
それでも、がっかりすることなかれ。テクニックの向上は望めなくても、よい演奏家になることができるのだ。「音楽を愛し、ダンスを愛し、歌を愛しましょう。ピアノは決して音階だけではないのです。」
はい、こころがけます。でも。それにしても黄色いブラウスがよく似合ってるなあ。108歳であんなに小綺麗でいられるなんて、ハードル高すぎかも・・・