ジャズのアドリブが弾けるようになる教則本を探す
私を含めて、ジャズピアノに興味を持ち、やってみたいなぁと思われるかたの疑問は、「どうしたらアドリブが弾けるようになるのか」が大半を占めると思う。
クラシックピアノ経験者ならなおさらだ。どうやったら楽譜なしで、えんえんと音楽が続けられるのか、楽譜あってこそ音楽がなりたつクラシックと、この意味で真逆なのである。
また、海外ではどうか知らないが、日本では「ハノン」といえば、クラシックピアノを志すひとにとってのバイブル的存在だ。「ハノン」をやらずして、クラシックピアノの上達はあり得ない、みたいな雰囲気ってあると思う。
その「ハノン」印をジャズの上にくっつけた教本を目にしたジャズピアノ志望者は、「わ! これをやればジャズが弾けるようになる(アドリブができるようになる)」と思うのが当然だろう。そう、かくいう私もそのひとりだった。だから、「ジャズハノン」という教則本を買ったのだ。
人気の教則本、ジャズハノンとは
この「ジャズハノン」、著者はレオ・アルファッシーというアメリカのかたということだから、アメリカでもハノンの知名度は高いということだろう。
私のもっているジャズハノンの末尾をみると、1995年初版発行、2020年43版発行とある。43版とあるからには、ロングセラーといってもいいのではないか?
ジャズハノンの目次としては
- 音程と三和音
- 7th
- 7thコード
- ウォーキングベース
- 転回形
- 5度圏
などなどとあって、他の普通のジャズの理論書とあまり変わらない。
各目次に練習曲がついているので、私はこの練習曲がとてもジャズっぽいことを期待していた。そして毎日、毎日、それらを弾くことによって、自然とアドリブのアイデアが泉のようにこんこんと沸き・・・だったのだ。が、とても残念なことに、そうでもなかった。
練習曲8番を除いて、大半の練習曲では、コードをアルペジオに分解したものにときどき半音を下げたりシンコペーションをつけたりしたもので、弾いていてジャズを感じるフレーズはほとんどない。少なくとも私には退屈な練習曲だ。
音源なしが最大の欠点
いや、退屈な練習曲と感じるのは私だけで、この練習曲を弾きながらスィングする人もいるかもしれない。
しかし、このジャズハノンの最大の欠点は音源がついていないことだ。ジャズの8分音符はクラシックの弾き方ではない。完璧な記譜法ではないかもしれないが、下のように表せられていることが多く、ダーダダーダダーダと引きずるような弾き方でないとジャズにはならないのだ。
ツェルニー30番を終了したレベルのかたなら、ジャズハノンの練習曲は簡単に弾ける、と思う。しかし楽譜通りに弾けたから、といってジャズが弾けることにはならないし、ましてやアドリブのアイデアが増えることもない。ああ、そこが問題なのだ!
ネーミングは素晴らしい
私はこの「ジャズハノン」は、ネーミング勝利だと思う。教則本名にハノンを冠した、そのビジネスアイデアはすごいと思う。
また、ジャズだけでなく、ブルースやブギウギにハノンの名を冠した「ブルースハノン」「ブギウギハノン」もあるから驚きだ。
ところで、ハノン先生はフランス人、正確にはシャルル=ルイ・アノン教授は19世紀に生きた作曲家、ピアノ教授だ。自分の名前がクラシック音楽以外のものにも使われることになるとは、思いもよらなかったのではないだろうか。