ブラームスの交響曲第3番第3楽章がテーマの「さよならをもう一度」
「さよならをもう一度」(Goodbye Again) は、フランソワーズ・サガンの小説「ブラームスはお好き」(Aimez-vous Brahms) を映画化したものだ。
20年くらい前までは、サガンは日本でも人気作家で、どこの書店でも彼女の本が置いてあったから、当然私は「ブラームスはお好き」も読んでいた。読んだ当時は、パリで繰り広げられる、ブルジョワ大人の恋愛事情に憧れの念を抱いただけだった。
ゆえに、この映画版の音声がフランス語でなく、英語であるということで、私は一も二もなく不合格点をつけていた。フランス語でなくして、どうしてあのパリの雰囲気がでるだろう?と思ったからである。
映画で使われていた、ブラームスの交響曲第3番第3楽章の、甘く切なげなメロディーが大好きだったのもかかわらず、である。
YouTubeでみる映画「さよならをもう一度」
最近、この映画を観る気になったのは、YouTubeで全編がアップされていたからである(残念ながら日本語字幕はないが)。
タダというのは本当にありがたいものだが、見終わった感想としては、この映画はおカネを払ってみても後悔しないかも、と思ったほどだ。
それほど、アンソニー・パーキンスの演技が素晴らしく、イヴ・モンタンもはまり役、イングリッド・バーグマンの気品ある美しさが堪能できる、大人の恋愛映画なのだ。
さて、そのあらすじは、というと・・・
インテリアデザイナーのポーラ(バーグマン)は40歳。ロジェ(モンタン)という同年代の恋人がいるが、彼女が望むようには愛してくれないので孤独を抱えている。
そんなとき、金持ちの顧客の息子で、25歳の美青年、フィリップ(パーキンス)と知り合う。フィリップは年齢差にまったく躊躇することなく、彼女を熱愛する。最初はためらっていたポーラもその情熱に負け、またロジェの浮気が発覚したことから、一時はフィリップの胸に飛び込むのだが・・・
映画「さよならをもう一度」の全編はこちら↓
映画と小説の相違点
映画と小説では、登場人物の名前、ポーラの年齢(小説では39歳)など、細かい点についていくらか違うところがあるが、大きく違うところがひとつある。
それは、映画では最後のほうでポーラとロジェが結婚することである。それだけなら、ハッピーエンドなのだが、実際はそうでもないのだ。
「やれやれ、ポーラの孤独は決して解消されることはないだろう」と、観ている者に思わせるラストシーンがある。そうすると、全編に流れるブラームスの交響曲3番第3楽章のメロディーは、ただ甘く切ないだけでなく、もっと深い何かを語りかけてくれるような気がする。
マクロン夫妻には勝てない
中年を過ぎた女性が来るべき老いに怯え、中年の男と若い年下の男のあいだで揺れ動く、といった図式はさほど珍しくないように思う。ひょっとしてサガンがこの先駆けを作ったのかもしれないけど。
たしかに1961年では、いくらパリでも、40歳の女性と25歳の男性の恋愛は珍しくスキャンダラスだったのだろう。ところが、いまや24歳の年齢差があるフランス大統領マクロン夫妻の出現で、15歳の年齢差は霞んでしまったように思う。
さて、今後マクロン夫妻を超える年齢差カップルが現れるのかどうか?