『枯葉よ~♩』の舞台はどこ?と聞かれても
娘が一時フランスに行ったりしたため、ウチの両親は60過ぎてから、十何時間の飛行時間に耐え、数回フランスまで来たことになる。
「本当にお疲れさんでした」なのだが、特に母は、パリでも元気そのもので、秋に来た時には、「ねぇ ゆめちゃん、 『枯葉よ~♩』の舞台はどこなん?」と何度ともなく、私に聞いていた。
私は「知らんがな、そんなこと」と思ったのは確かだが、とにかく母は、我が家では女王様だったので、適当にお茶を濁す返事をしていたと思う。
母亡き今となっては、あのとき適当に、「この近くのアパートに、イヴ・モンタンが住んでてんけど、ある日 枯葉がはらはら落ちてくるのが、ベッドから見えてんて、そんで・・・」とか、いい加減なハナシをでっちあげておけばよかった。母はさぞかし満足しただろうに。
イヴ・モンタンで味わうシャンソン味「枯葉」
イヴ・モンタン(Yves Montand)は1991年に70歳で亡くなるまで、歌手としても俳優としても、大成功を収めたかたらしい。
また、艶福家としても有名で、若いころはエディット・ピアフの愛人だったし、シモーヌ・シニョレという有名女優を妻にもちながら、マリリン・モンローとも浮名を流したとか。なおかつ、政治活動にも熱心だったそうで、忙しい人やねぇ。
あらためて彼の「枯葉」を聞いてみると、このスタイルで立派な完成品だと思う。言ってみれば、「シャンソン味」でいいと思う。私ならジャズにしようとは、まったく思いつかない。歌詞も、捨てた捨てられた、の演歌風でないところがいいし。
・・・僕は君を愛していた。君も僕を愛していた。
けれども人生は愛し合う二人を分け隔ててしまった。
ゆっくりと、音もたてずに・・
「枯葉」はいかにしてジャズになったか
シャンソンの「枯葉」がどうしてジャズのスタンダード「枯葉」にもなったかについては、聞かれれば今の私こそ、「知らんがな、そんなこと」といいたい。
とにかくいろいろな人があらわれ、さまざまな「枯葉」が生まれ、今ではジャズを志す者は必ずといっていいほど、「枯葉」を演奏するようになった。
クラシックとジャズの違いは多々あるけれど、演奏者の立場から考えると、例えば、クラシックでは、ショパンの英雄ポロネーズやバラードが弾ける人は、技術に多少(雲泥?)の差があっても、上級者と決まっている。
ところが、ジャズでは初心者の「枯葉」もあり、プロの「枯葉」もあり、各々のリズム、和音もそれぞれでOKなのだ。だから同じ人でも、現在弾いている「枯葉」は、過去の「枯葉」とまったく異なるかもしれない。こういうところが、ジャズの面白い点だと思うのだが。
ウィントン・ケリーでスィングするジャズ味「枯葉」
「枯葉」のジャズの名盤は、いろいろあるけれど、私にとっては、やはりウィントン・ケリー(Wynton Kelly)のアルバム、「Full View」にはいっている「枯葉」が一番だ。
もうこの「ジャズ味」は一度味わったらやめられない。だから、こんな風に弾けるようになりたい、と思って日々あがいているのだよ。