映画「サウンド・オブ・ミュージック」とは
初めて映画「サウンド・オブ・ミュージック」を観たのは、小学生のとき、のちに阪神淡路大震災で倒壊してしまった、神戸新聞会館大劇場(現:ミント神戸)でだった。
その時、立ち見でみたのだが(当時は比較的、立ち見が多かったように思う)、いっぺんに主役のジュリー・アンドリュースの美声の虜になり、サウンドトラックのLPレコードを買ってもらって、何度も何度も繰り返し聞いた。
この映画のなかで、「ドレミの歌」はペギー葉山さんが、日本語で歌って、日本でも大ヒットしたと記憶している。しかし、私が気に入ったのは、「ドレミの歌」よりも、「マリア」「すべての山に登れ」、「ひとりぼっちの羊飼い」、そしてこの「私のお気に入り」(My favorite things)だった。
この歌が歌われるシーンが、どういうものかというと、
修道院から家庭教師としてトラップ大佐一家にやってきたマリア。母親のいない大佐の子ども7人はマリアを慕い、雷の夜も怖がってマリアの寝室にやってくる。
そんな子供たちに、「ハチに刺されたとき、犬にかまれたとき、イヤなことがあったとき、そんなときは自分の『お気に入りのもの』を想像するといいのよ」とマリアは歌う。
連弾で「私のお気に入り」を弾いた
「サウンド・オブ・ミュージック」を皮切りに「メリー・ポピンズ」「マイ・フェア・レディ」と、ミュージカル映画に夢中になった私だったが、その後、ミュージカル映画も下火となり、私の夢中の対象もビートルズに取って代わってしまったため、「私のお気に入り」のことをすっかり忘れてしまった。
だから、今年の1月の発表会で、「連弾で『私のお気に入り』を弾きませんか?」と先生からご提案があったときは、懐かしさでいっぱい、ステージでピアノに向かったときには、本当に感無量だったことよ。
おまけに発表会会場の「里夢」はかつて住んでいたマンションのちょうど真向いだったしね。
チリコンカン味の「私のお気に入り」
「私のお気に入り」はジャズのスタンダードとしても有名だ。その功績はひとえに、ジャズの巨人、ジョン・コルトレーンによるものだと思われる。
彼が、「私のお気に入り」すなわち「My favorite things」というアルバム、を発表したのは、1961年で映画の「サウンド・オブ・ミュージック」の1965年の封切りより早いのだ。
つまり、コルトレーンは映画ではなく、ブロードウェイミュージカルに触発されて、この曲をジャズにした、ということになるのだな?
一般にコルトレーンは私には難解すぎることも多く、この「My favorite things」も、ジュリー・アンドリュースの歌とはひと味もふた味も違うなぁ、と感じる。
例えていえば、オリーブオイルで味付けしたビーンズサラダがチリコンカンになったようなものだ。私はチリコンカンは大好きだけれども、この場合はなぜか、オリーブオイルと塩こしょうで簡単に味付けしたビーンズサラダのほうを選びたい。
すまんな、コルトレーン。
でもあなたの功績に敬意を表して、あなたの「My favorite things」も忘れずにご紹介しておくよ。