スタンダードの「Who can I turn to?」とは?
不出来だったアンサンブル練習会のあと、ただいま取り組むべきジャズピアノの曲では、まず、「Who can I turn to?」をご紹介したいと思う。
この曲は、1964年にロンドンで初演されたミュージカル、「ドーランの叫び/群衆の匂い」(The Roar Of The Greasepaint-The Smell Of The Crowd)の挿入歌らしい。
でもそんなことは、この記事を書こうと思うまで知らなかった。私が知っているのは、かのビル・エヴァンスのピアノトリオ名盤、次にオスカー・ピーターソンの演奏、朗々と歌い上げるトニー・ベネット、そして最近では、クラシックの声楽でポップス曲を歌って人気を博している、イギリス出身の多国籍ヴォーカルグループ、イル・ディーヴォ(IL DIVO)の歌声によるものだ。
↓ビル・エヴァンスの Bill Evans Trio at Town Hall より
↓ イル・ディーヴォ(IL DIVO)のWho can I turn to?
(Quién me hace caso)
40年前に買ったビル・エヴァンスのコピー楽譜集
先生からこの曲を提案されたとき、あまりにも多くのヴァージョンがあるこの曲では、いったい誰のものをお手本にしたらよいのやら、と途方に暮れた。
そして、「もしや・・・」と思い、家の本棚をひっかきまわしたら、40年前に買った、ビル・エヴァンスのコピー楽譜集のなかにこの曲が収録されているのを発見したのだ。
「やったね! これで楽勝!!」とそのときは思ったのだが・・・
ジャズピアノ練習法にコピーは必要か?
ジャズピアノの練習方法では、まず巨匠たちのコピー譜をそのとおりに弾いてみる、と言うのがセオリーのようになっているかと思う。高校野球で、ノーアウントランナーが出たら、次の打者は送りバントをせよ、と言っているようなものである。
でも現在、習っている先生の考え方は違う。先生自身も、駆け出し時代はコピーを弾いていたらしいが、そこから抜け出て、自分の即興演奏ができるようになるまで10年かかった、とおっしゃっていた。
要するに、先生はコピーを弾くことをまったく推奨されていないのだ。つまり、楽譜を見て弾くようでは、いつまでたってもクラシックの域を出られず、「何が出てくるかわからない」といったジャズ本来の面白さからはずれてしまうやり方だ、と思われているのではないか、と推測する。
実際、いざビル・エヴァンスの楽譜を前にしても、その譜読みだけで何週間もかかりそう、と思った。それを全部、モノにして、それを土台にして自分のアドリブができるのはいつになるか、というと、「あの世にいってから」ということになりそうである。
読書も読譜も眼のよいうちに
それにこれが第一の原因だが、持っているビル・エヴァンスのコピー譜は、出版社の意向かどうか知らないが、普通の印刷ではなく、手書き風なのだ。
これは眺めている分には味があっていいが、いざなんの和音か、解読しようと思うと、ビル・エヴァンスは特に和音構成に凝っているだけあって、老眼には厳しい。読書も読譜も、はかどるのは眼がいいうちだ。
もっとも最近では、子どものときからスマホやタブレット画面を長時間見ているから、将来どうなるのだろう、と他人事ながら心配にならざるをえない。