ノーベル文学賞受賞はアニー・エルノー
きのうのお昼ごろ、外出前にノーベル文学賞の発表をネットニュースで知った。今年の文学賞受賞者は、また村上春樹ではなく、フランス人作家のアニー・エルノーということである。
そこで、私は夫(フランス人)に聞いた。以下、私と夫のやり取り。
「アニー・エルノーって知ってる?」
「知らない」
「フランス人だよ、ノーベル文学賞をとったんだって!」
「どうせ、LG〇〇だからじゃないの? 僕はあらゆる賞というものに価値をおいてないからね、ノーベル賞とか、アメリカのなんだっけ、アカデミー賞とか・・・」
夫の考え方は深ぼりするまでもなく、よぉく知っている。私は外出の支度に専念し、もう一人のフランス人に会う機会であるフランス語のレッスンへ、と向かった。
「シンプルな情熱」のフランス語文庫本は断捨離した
実は、私はかつてアニー・エルノーのベストセラー小説「シンプルな情熱」(原題:Passion simple)」のフランス語文庫本を持っていた。
パリで買ったのだが、買った理由は、薄くて、最後まで読み通せそう、そして文体も凝ったものではなく、1ページだけを見れば、アゴタ・クリストフの文体のように簡素なものだったので、読みやすそうと思ったからだ。
さて、その内容はといえば、昭和歌謡風で、
「あなたゆえ 狂おしく乱れた私の心よ」(サバの女王:スサーナ)
「あなたを愛で殺したいほどよ」(愛で殺したい:サーカス)
「誰にも負けずにあなたを愛した私なの」(愛のフィナーレ:ザ・ピーナッツ)に代弁される、女の情念日記、と私には思えた。
ちょっと私の好みではなかったので、浦和から兵庫県南部に引っ越した折の大断捨離でBOOK OFF行きになってしまった。
ところで、私がフランス語の本を処分することはそれまでなかった。なぜってそれらは、日本では簡単には手に入らないものだし、買えばすごく高いことを経験的に知っていたからだ。
それでも「シンプルな情熱」を処分してしまったということは、よほど評価していなかったということになるのであろうが、それでも、将来ノーベル賞作家になる、と予言していたら捨てなかったのになぁ。
話題にならなかったフランス語レッスン
フランス語レッスンでは、本題にはいる前に、先生が私に投げかける、「最近何かありましたか?」
といったたぐいの質問からはじまるのが普通だったので、私は、
「アニー・エルノーがノーベル文学賞をとりましたね! 先生はアニー・エルノー、お好きですか? おススメの作品は何ですか?」
などなど質問しようと企んでいたのだが、その日、先生は、「日本の秋について、日本への留学を希望している外国人学生を相手に講演をするつもりで、プレゼンテーションをしなさい」という本題からはいられたのだ。
残念! そしてそのレッスン中先生がアニー・エルノーについて言及することはなかった。
ただ、ポツリとおっしゃったのは、
「最近のフェミニストって、やりすぎて滑稽なぐらいだね。フランス語の文法法則を無視して、なんでも語尾にe をつけて女性形にしようとしている」。
暗にフェミニスト運動の急先鋒であるアニー・エルノーを批判したのかもしれない。
惜しまれる欧明社の閉店
街の大型書店に行けば、「ノーベル文学賞受賞! アニー・エルノー特設コーナー」でもあるのか、と思ったが、ジュンク堂芦屋店には何もなかった。それどころか、海外文学の文庫本コーナーを探すのがむずかしいくらい。
それとも、会社員時代に毎日昼休みに通っていたジュンク堂池袋店では、大きくポップとかがでているのかなぁ。
ところで、私がときおり訪問する在仏日本人のかたのブログでは、アニー・エルノーの後期の作品をかなり評価されているようである。
でも、日本では翻訳もまだ出ていないようだし、原語で読むにしてもわざわざアマゾンフランスまで注文するの?そこまでして面白くなかったらいやだなぁ。つくづく欧明社の閉店が惜しまれる。