ジャズピアノの先生の演奏動画
私のジャズピアノの先生はほとんど毎日、YouTubeに演奏動画を投稿している。
私はもちろんチャンネル登録しているので、毎朝YouTubeにアクセスするたび、「あ、きょうはこんなのがでている」と、知らない曲であればメモをとって調べるようにしている。
ところが、まえまえから気になっていたのが、先生の演奏動画が小さすぎてどういう指使いで弾いていらっしゃるのか、さっぱりわからない。きっと頭上にセットしているカメラの位置が、ピアノから遠すぎるのだ。
↓ これじゃわからん!
先生の動画に物申す
あるレッスンの日、私は先生に聞いてみた。
「先生、なんでああいう撮り方されているんですか? どういう指使いで弾いているのか、みようと思ってもあれではさっぱり見えません! いっそピアノのすぐ横にカメラを置いたらどうですか?」
すると、先生はもじもじと、歯切れ悪くおっしゃった。
「あんまり、見えへんほうがええ、言われるねん。 遠くでなんかやってる、ぐらいでちょうどええ、言われるねん。」
私は驚いたが、いったいそんなことをいう生徒がいるのか、と怪しんだ。だってピアノを弾く者なら、誰だって先生の華麗な指さばきを見たい、と思うのが普通でしょ?
(見えないほうがいい、などどいうのは、奥さんか娘さんかも、と内心思ったが何もいわなかった)。
それに、顔を写すわけでもあるまいし、先生の手はぽちゃぽちゃと赤ちゃんみたいに肉付きがよく、私の静脈が浮き出た老け手とは大違いなのだ。とても65-70歳とは思えない。
先生の動画が改善されていた
ところが、先日レッスンに行く前にふとYouTubeをみると、先生の動画の撮り方が変わっていた!前よりかは、いくぶん手元が見やすくなっていたのだ。
レッスンのときに、先生にこのことを告げると、
「あれなぁ。きょうはゆめこちゃんがレッスンにくるから、おもてカメラを横において撮ってみてん。あれでええのかなぁ」
私は先生の素直さに心打たれ、涙がでそうになった。私より年上で(ちょっとだけ)、プロ歴何十年、ニューヨークでも腕を磨いてきたプロのジャズピアニストが、私のような生徒の批評を真に受け、改善しようとしたのである。
なんという素直さ、心の広さ、他人の意見を「聞く」柔軟さ・・・これだから先生には抱えきれないほどの生徒さんがいるのだ。私はジャズピアノだけでなく、人の道も先生から学ばなければいけないのかもしれない。
だいたい、「なんで、あんな撮り方されるんですか?」という言い方は、ちょっと失礼、態度がデカすぎだったかなぁ、と反省している。
先生に言えない私の演奏動画
先生に対する態度は脇を置いておいて、私は先生にたいして後ろめたいことがある。それは、先生は私がYouTubeに演奏動画を投稿していることをご存じないことだ。
もし知られたらほんとうに恥ずかしい。先生はネットをあれこれ検索するほどおヒマではないので、大丈夫とは思うのだけれど。何か良くないことをしているようで、気が引ける。
どうしよう。ジャズ編のところだけ削除しようかなぁ。