酒が飲めないとジャズのライブは敷居が高い
本当ならジャズのライブにはもっともっと足を運びたい。
けれども、私はお酒が飲めず、夜の外出も最近はとんと苦手になった。
お酒が飲めないのは体質上仕方がないのだが、これで人生ずいぶん損をしているのかなぁ、と思うことがある。
だってもし、お酒が飲めたらおばさんが一人で、ジャズバーのカウンターに座って、カクテルだがブランディーだか知らないが、そういうたぐいの飲み物を注文したら、さまにはならなくても奇異ではないだろう。
しかし、
「オレンジジュースください!」
「紅茶とケーキのセットってありますか?」
とはねぇ。
私にはまだそんな勇気はない。
ひとりでラーメン屋のほうが、まだハードルはずっと低い。
そんなわけで、兵庫県芦屋市の公民会館で昼間から、しかも¥500で生のジャズが聞けるなんて、私にはまたとない機会だったのだ。
柏谷淳(sax)永田有吾(pf)本川悠平(bs)のトリオ演奏
11月12日、公民館で聴けたトリオは柏谷淳氏(アルトサックス、芦屋市在住)、永田有吾氏(ピアノ)、本川悠平氏(ベース)。
あれ、ドラムがいないんだね?
こういう構成のジャズを生で聞くのは初めてで、楽しみにしていた。
席を取るのは早いもの順だったので、私はサササーとピアノの永田氏の後ろの席をゲット。
ふだんとは変わった位置で、ピアニストの動きを調べようと思ったのだ。
開演前に渡されたプロフィールでトリオの皆さんの経歴を確認。
みなさんライブやイベント、CDを発表されたり華々しいご活躍だが、生年が1980年代、永田氏は1989年、若ーーーーーっ!!
1989年生まれと聞いたなら、まだ高校生くらいだと思ってしまう。
私の時代認識の物差しが狂っているのかもしれないが。
聴く側の年齢層は高い
さて、この若者たちの音楽を聴く側の年齢層は、というと・・・はっきり言って非常に高い。
60代の私が「お若いの」と呼ばれたとしてもおかしくない気がする。
何てったって、アンケート用紙の「あなたの年齢層」には70代、80代、90代まであるのだ!
ふつう60代以上で終わりでしょ?
そんなに聴衆の年齢層が高ければ、前拍で手拍子しそうなおじいちゃん、おばあちゃん達と思われるかもしれないが、そこは大正時代から昭和にかけて、モダニズム、ダンディズムが花開いた芦屋。
誰もそんな野暮なことはしない。
それどころか、ジャズクラブでのライブのように、ちゃんとアドリブソロが終わったところで一斉に拍手する。
ソロが終わった演奏者も軽く会釈する。
そう、酒もタバコも夜の帳もないが、公民館がジャズクラブに変身した貴重なひとときだった。
幅広い演奏曲目
演奏曲目は往年のジャズファンを考慮したのか、「枯葉」「スターダスト」など誰もが知っている曲に加えて、「Tadd's Delight」「カリプソ」の人気曲の他、本川氏、永田氏のオリジナルを加える、という幅広いもの。
たぶん、あまりに聴衆に迎合した名曲ばかりだと、演奏者もモチベーションがあがらないし、演奏者好みに偏っても高齢者からのよい反応は得られないだろう。
また、詩人の長田弘さんの詩にインスパイアされて永田氏が作った「一日の終わり」も披露された。
詩からジャズが生まれるなんて、こんな経験は初めて。
永田氏はよほど感性が繊細な方なのだろう。
ジャズカラバッシュ(Jazz Calabash 2022)
永田氏は、感性ばかりでなく、行動力と実行力に長けたかたでもあるようだ。
というのは、昨年も開催されたそうだが、「新しい時代に向かうジャズ・フェスティバル」として大阪キタで開催される「ジャズカラバッシュ」の実行委員長を務めていらっしゃるとのこと。
フリーパスチケット1枚で、関西で活躍するプロミュージシャンの演奏を梅田界隈の数か所のライブハウス、ホールで楽しめるそうだ。
これも11月23日(水・祝)の12:00 からということだから、お昼からジャズが楽しめることになる。
夜は早寝の高齢者にはありがたい企画ではないだろうか。