「7年目の浮気」がイチオシのコメディである理由
私は1955年のアメリカ映画「7年目の浮気」を少なくとも3回は観ている。けれども、この映画を有名にした一因である、マリリン・モンローのスカートが、地下鉄の風でめくれ上がるところを見たかったからではない。
もちろんマリリン・モンローについては、非常に魅力的な女優さんだとは思っている。豊満な肢体に、お人形さんのような愛らしさも兼ね備えて、ケネディ兄弟とのスキャンダル、謎めいた死が加わっては、もはや伝説の人であろう。
それでも私がこの映画をコメディ映画としてイチオシだと思うのは、冴えない中年男の浮気心を描いたビリー・ワイルダー監督のユーモア感覚のすばらしさと、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の使われ方が絶妙だからなのだ。
映画「7年目の浮気」のあらすじ
前置きはさておき、映画「7年目の浮気」がどんなあらすじか、をざっくりご紹介すると・・・
ニューヨークに住む平凡な、結婚7年目の中年サラリーマン、リチャードは妻子がバカンスに出かけているあいだ、ひとりでアパートで暮らすことになる。ところが偶然、上階に夏の間だけ引っ越ししてきた、ブロンドの美女(モンロー)と知り合いになり、臆病者のリチャードは行動に移せないものの、この美女との、あらぬ濡れ場をことあるごとに妄想することになる。
妄想場面で必ずでてくるラフマニノフのピアノ協奏曲第2番
この映画では、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の出だし、「ターラ ターラ ターラ タララ」が鳴り出すと、リチャードの妄想であるモンローが登場する。
ちなみにリチャードはしょっちゅう妄想している。元来小心者ゆえ、積極的にモンローにどうこうしよう、というまでは至らない。しかし実際のところ、この美女とよからぬ行為に至ることでアタマがいっぱいなのである!
一方、妄想であらわれるモンローは、昼間のコケットでチャーミングな女の子ではなく、肩もあらわにしたロングドレス、黒い手袋、煙管を手にするという妖艶な姿。
ピアノを弾いていることになっているリチャードの姿は妙にキザでクネクネしている。ピアノの音と動きがまったくあっていないのがかえって可笑しい。
リチャードの奏でるピアノに興奮したモンローが胸をかききらんばかりに、「ここはどこ? 私は誰? お願いだからやめないで!」と叫ぶ。
ところがリチャードは途中でピアノを止めてしまい、音楽が最高潮に達したところで、モンローを引き寄せ、キスをする!(もちろん妄想上)というのが下の動画である。
ラフマニノフピアノ協奏曲第2番ピアノソロ版
このピアノ協奏曲第2番、さすがに人気曲であるようで、ピアノソロに書き下ろしたのがいろいろ市販されているようである。
私も弾いてみたいなぁ、とは思うのだが、9度(ドから次のレ)がせいいっぱいの私の手でも弾けるようにアレンジされているのかどうか、ということがまず気がかり。(ラフマニノフの左手は、なんと12度(ドから次のソ)まで押さえることができたそうだ)。
それになにより、この映画の妄想場面を思い出して、笑えてくるのだ。ラフマニノフを弾きながらニヤニヤするピアニストなんてまずいないでしょうに!
有名なモンローのスカートがめくれあがる場面
せっかくなので、この映画の有名なシーン、地下鉄の通過でモンローのスカートがめくれ上がる動画も貼っておく。
今の感覚からすると、これがどうしてそんなに話題になったのかわからないほど、控えめなお色気だと思うのだが・・・(いや、控えめなほうがエロティシズムが掻き立てられる、と山田五郎先生も言っていたな)。
それよりも私が感心するのは、モンローのキメの細かい、お餅のような肌の美しさ。腕もぽっちゃりしていて肉付きがよく、いまどきのモデルさんとは違った健康的な肉体美に驚嘆してしまう!