インド映画「ダンガル きっとつよくなる」とは?
2016年のインド映画「ダンガル きっとつよくなる」(原題:Dangal)は、インドアマチュアレスリング界の元王者がその娘たちに自らの理想を託し、周囲の反対や無理解を押し切って、インド女子レスリング界の第一人者に育て上げる感動のスポーツ根性映画である。
日本は女子レスリング大国?
父と娘でレスリングに賭ける、といえば、日本人にはすぐ、「気合だーー!」の掛け声で有名な元プロレスラーのアニマル浜口とその娘、浜口京子の二人三脚ともいえる戦いぶりを思い出すのではないか。
私はレスリングにはまったく詳しくはないけれど、「気合だー!!」のアニマル浜口は大声と、いかつい容姿にもかかわらず愛嬌があったし、父と娘の絆には実に微笑ましいものがあったので、その活躍をいつも期待していた。
また姉妹でレスラーというのは伊調姉妹もいたし、忘れてはならないのは吉田沙保里の活躍である。こう見れば日本は女子レスリング大国なのかもしれない。私が気がつかなかっただけで!
インドの女性の地位を考える
日本の女性の地位は世界的に見て自慢できるものではないが、それでもインドの女性の地位に比べたらまだましなのだろう。
今でもインドでは、女の子には家事しか教えられず、14歳になったら顔も見たことのない男のところへ嫁にやられ、子どもを産み育てることしか期待されないのだろうか?実に胸の痛くなる話である。
映画では父の厳しいトレーニングに反抗する娘たちに、無理やり親に結婚させられた少女が自分の境遇に比べて、「あなたたちのお父さんは娘思いだ」、と泣きながら訴える場面がある。幸運にもYouTubeで日本語字幕付きのものを見つけたので、ぜひ見ていただきたい。
この熱血レスリング親父の指導は見方によれば、パワハラ指導の典型とみるひともいるかもしれない。しかしインドの女性の地位、周囲の人たちの女性スポーツに対する無理解を考えると、一概にパワハラと糾弾する気には私はなれないのだ。
これは感動の実話だった
映画にでてきた熱血親父も、姉妹レスラーも実在の人物をモデルにしている。
姉のギータは2010年のコモンウェルス(英連邦)大会で金メダル、2012年ロンドンオリンピック出場、同年レスリング世界選手権で銅メダルを獲得している。妹のバビータも2018年のコモンウェルス大会で銀メダルの他、数々のメダルを獲得しているから立派なものだ。
彼女たちは以下のサイトでも掲載されているように、多くの日本女子レスラーと戦ってきているのだ。もし知っていたら、もっともっと女子レスリングに興味が持てたんだけどなぁ~ 残念!
恐るべきアーミル・カーンの役者魂
娘たちの活躍にどうしても目がいってしまったが、やはりこの映画は父親役を演じた主演のアーミル・カーンがいなければ成り立たなかっただろう。
もし「きっと、うまくいく」を見た後、何も知らされずにこの映画を観たら、とても同じ人物が主役を演じているとは信じられなかったに違いない。
アーミル・カーンはこの役を演じるために27kg体重を増やして97kgとし、そしてまた5か月間で70kgにまで落としたそうだ。もはや、ロバート・デ・ニーロに勝るとも劣らぬ恐るべき役者魂と言えそうだ!