夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

映画「戦争と平和」はオードリー・ヘップバーンのための娯楽大作

娯楽大作としては上出来

1956年のアメリカ映画「戦争と平和」をやっと見た。やっと、というのはこの映画についてはこれまであまり良いレビューにお目にかからなかったのと、上映時間が長いので(208分)眼が疲れるのではなかろうか、という危惧からだった。

おまけになぜか10代のころから歴史ものが大好きだった私は、トルストイの原作を2回も読んでいる。いくら3時間を超す映画とはいえ、あの長編の全部を網羅するのは無理だろう。だから大幅に端折られた映画を観るときっとがっかりするだろう、と思ったのだ。

観た結果・・・全然悪くなかった! 娯楽大作としては最高の部類ではないかと思うんだけど、違いますか?

CGに見慣れた眼には迫力の人海戦術

どうも最近はCGの画面を見慣れているせいか、1956年という人海戦術に頼らざるを得なかった頃の映画製作の凄さには、度肝を抜かれた。Wikiによると以下となる。

(引用はじめ)合戦シーンに1万8000人のイタリア軍の兵士を使い、忠実に再現したナポレオン時代のロシア兵やフランス兵の軍服を着せた。この軍服のボタンに10万個以上を使い、約7000着の衣装、約4500丁の銃、200門の大砲が作られた。(引用終わり)

映画では戦場のラッパが鳴り、鼓笛隊の太鼓の音が連鎖するように響く。両軍、肉眼で見える距離にまで近づいたところで、「撃ち方始めーーー!」とともに、大砲がぶっ放される。整列した兵隊の銃が火を噴く。19世紀初頭の戦争ってこんなのだったのか?一見、スポーツの撃ちあいのようだが、ひとは確実に死んでゆく・・・

この人海戦術とCGとの違いは、アコースティックピアノと電子ピアノの違いに似ていると思う。電子ピアノの音に慣れていると、なんとも思わないのだが、たまたまグランドピアノの鍵盤を押すとその響きにビックリするのと同じではないか、と思うのだ。

オードリー・ヘップバーンはいつもと同じ

この映画の評価がそれほど高くないのは、人気女優オードリー・ヘップバーンの映画、と捉えられているからではないだろうか?ピエール役のヘンリー・フォンダも当時から有名だっただろうに、いまいち影が薄い。ヘップバーンばかりが目立って、朝ドラの主人公のように、明るくて天衣無縫。「ローマの休日」のアン王女や、「サブリナ」「ティファニーで朝食を」の主人公と全然変わらない。でも彼女のファンは、美しいドレスで笑顔でワルツを踊る彼女を見ることができて大喜びだろう。

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音楽はあのニーノ・ロータだった

ところでこの映画の音楽担当は、あの映画音楽で有名なニーノ・ロータだったことは今回この映画を観るまで知らなかった。

ニーノ・ロータと言えば、「ロミオとジュリエット」「太陽がいっぱい」「ゴッドファーザー愛のテーマ」などの映画音楽の大ヒットでよく知られる。ご本人は「本業はクラシック音楽で、映画音楽は趣味に過ぎない」と言っておられたようだが。

映画を観終わったあと、確認のために映画のサントラ盤をYouTubeで聴いてみると、なるほど壮大、勇壮な交響曲仕立てである。けれども映画の途中の効果音では、フランス国歌ラ・マルセイエーズ」のモチーフを短調にしたものが繰り返し使用された。ナポレオンをコケにするにはそれが一番、効果的だと思われたのだろう。実に悲しき「ラ・マルセイエーズ」であった!

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