夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

小川典子さん「夢はピアノとともに」でピアノの努力を考える

「夢はピアノとともに」小川典子著 時事通信社

「世界が認めた日本人女性100人」に選ばれたピアニスト

英国と日本で活躍しているピアニスニト、小川典子さんを知ったのは、先日読んだ「ヤクザときどきピアノ」の参考文献として挙げられている彼女の著作「夢はピアノとともに」がきっかけである。

それまで私は彼女が2006年、Newsweek誌によって「世界が認めた日本人女性100人」に選ばれた、とは知らなかった。しかし「世界が認めた」とはどういう意味やねん。それってNewsweekの判断でしょ?世の中には人知れず立派に人生の花を咲かせている市井の人々がいっぱいいるのだ。「そんなん、Newsweekに決めてもらわんでもええわ!」といいたいところだが、それは小川典子さんのせいではないのでひとまず置く。

「夢はピアノとともに」で考えるピアノの努力と練習

小川典子さんの著作、「夢はピアノとともに」であるが、これまで雑誌等に寄稿された記事の寄せ集めの観があり、統一感に欠けるのは否めない。しかし、ピアニストとして世界各地を旅するうちに感じたモノやひとに関する記事はなかなか面白いし、なにより私にとって「イギリス人と日本人の努力に対する考え方」と「絶対効果のある練習方法」が書かれた部分は大いに参考になった。これだけで読んだ甲斐があったというものだ。

「努力」や「根性」は英国では評価されない

おそらく小川典子さんも幼少時からピアノのスパルタ教育を受けてきたのだろう。10代でジュリアード音楽院に留学し、リーズ国際コンクールで3位入賞を果たしてからイギリスと日本の両方で演奏活動をはじめるのだが、日本では努力と根性が讃えられたピアノの練習が、イギリスでは「そんなに練習しなければならないなんて、才能がない」と捉えられがちなことに衝撃を受ける。

それではイギリス流に、ピアノの練習はほどほどに、ということになるのかもしれないが、筆者はそこまでは言っていない。そこで私は以下のように思ったのだが、どうだろう?

  • イギリス人だって相当努力している。ただそれを喧伝するのを潔しとしない。練習しているのに、していないように見えるよう、ええカッコしているのではないか?美しい白鳥が水面下で足をバタバタさせているのと同じように。
  • 日本のほうが底辺のピアノ人口はずっと多いだろう。イギリスではおそらく才能があり、将来に見込みのある人しかピアノを続けないのではないか?

絶対に効果のある練習方法を紹介してくれた

「人口の多いピアニストの群れに、共通の練習方法は、ないのかもしれない」「誰が、どう練習して上達したのか、本当のところはわからない」と前置きされる筆者だが、「絶対に良いことをもたらしてくれる練習方法を紹介したい」と、とっておきの方策を教えてくれた。ジャーーーーン!

ーゆっくりと練習することの効果は、信じすぎるほど信じてよい。ゆっくり始めたら、ゆっくりのテンポで行く。それがコツだ。指は、必ず『行き先』(次の音)」を覚えてくれ、頭と手が強い信頼感で結ばれる。

ーきれいな大きい音を出したいときは、弱くから始めてみよう。手を慣らしながら段階を追って強くしていけば、身体が痛くなったり音が割れたりしない。

学習動画「ドビュッシー アラベスク1」

小川典子さんは、Pianist Magazine というサイトを通じて、ピアノ学習者用にレッスン動画をアップされている。私が去年発表会で弾いたドビュッシーの「アラベスク1番」の動画を拝見したが、なにかこう、本当に正統派の弾き方という印象を受けた。私はこの曲を最初、ブーニンの演奏を参考にしようとして、似ても似つかぬだけでなく、奇怪なアラベスクになってしまったので、最初から小川典子さんのを見るべきだったと深く後悔した。彼女の英語も、日本人には非常にわかりやすくて良い。アラベスク1番は大好きな曲だから、この動画でもう一度復習してみてもよいなぁと思うのだ。

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