夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

指は曲げるのか、伸ばしたままか?きょうも行きます迷い道

バッハを弾く内田光子さん

老いて知るモーツァルトの美しさ

子どもの頃はモーツァルトの曲がどうしても好きになれなかった。メロディーが単純すぎて面白くなく、また左手が「ドソミソ ドソミソ」を繰り返すところがどうしょうもなくダサく思えた。それが齢65を過ぎると、好みが変わってきた。このシンプルなところがだんだん気に入りだしたのである。こどもの頃わからなかった和風料理の薄味が好ましくなってきたのと同じである。こんな日がくるとは、若いときには想像もしなかった。それで今やっているショパンプレリュード17番が終わったら(始まったばかりでいつ終わるのか見当もつかないのに!)またモーツァルトをやりたいなぁと思っている。

モーツァルトをきれいな音で弾くとは?

ところで「モーツァルトはとてもきれいな音で弾かねばならない」というのをよく聞く。きれいな音=クリアな明るい音ということか?いろいろなピアニストの動画を見ていると、鍵は指の第二関節をまげて弾くことにあるのではないか、と思い始めた。

例をあげると、モーツァルトを弾いているときのバレンボイム氏は、押している鍵盤と指の角度がちょうど90度近くになっている。これは指の第二関節を曲げているからできるのだろう。

ジャズ、ポピュラーのピアニストは指を曲げない

反して、ジャズポピュラーのピアニストでこの第2関節をまげて弾く人はちょっと思いあたらない。みなふだんは脱力した手を鍵盤に置いているかのようで、ここぞ、というアクセントがつく音を打鍵するときは、まるで指の付け根にバネがあるかのように、指が振りあがり、打鍵するように思われる。下はオスカー・ピーターソンビル・エヴァンスの例。ビル・エヴァンスの手はホロヴィッツのように鍵盤上で寝ているかのよう。

左:オスカー・ピーターソン 右:ビル・エヴァンス

エルクレス・ゴメスの指は踊っている

さらに面白いのはショーロというブラジル音楽のピアニストで、Hercules Gomesエルクレス・ゴメス)というかた。指自体が踊っているように高く上がる。私の気のせいかもしれないが、黒人ピアニストにはこういう弾き方をするひとがけっこう多いような気がする。ちょうど私たちアジア人の多くが、すり足のように歩くのに対し、黒人が跳びながら歩いているかのように。彼らは指の付け根にバネがあるのか?まさかー

ゴメスさんの弾くブラジル風タンゴナザレーの「オデオン」は最高だ。これを見るたびに「ブラジルへ行ってみたい!」と思う。

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ジャンル、作品によって弾き方が変えられればいうことなし

結局、ジャンル、作品によって弾き方が変えられれば問題はないのではないか?古典派を弾くときは曲げ指、ロマン派は寝かせ指、ジャズやポップスは踊り指、とかね。そこまで芸が熟していないので、今のところ、古典を弾くときはバレンボイム、ジャズを弾くときはピーターソンを思い浮かべるイメージトレーニングでごまかしている。要するにただいまも迷走中なのである。