次々に亡くなった20世紀ポップス界の巨匠
20世紀を代表するポップス界の巨人、作曲家、編曲家、ピアニストのバート・バカラックが2023年2月8日に亡くなった。享年94歳。
これで10代の頃の私を励まし、慰めてくれた作曲家はビートルズを除き、みんな亡くなってしまった。
ミッシェル・ルグラン、2019年に86歳で没。フランシス・レイは2018年に同じく86歳で没。フランシス・レイはいかにもパリの香りがするメロディーとサウンドが魅力だったし(パリで生まれ育った夫が聞いたら嗤うだろうが)、ミシェル・ルグランはパリの香りにジャズのテイストもあり、胸が締め付けられるような切ないメロディーも多かった。
そしてバート・バカラックも亡くなった!
そしてバート・バカラック!音楽を専門に勉強したことがない私はどうして彼の音楽が独特なのか説明できない。今ネットで調べれば「転調と変拍子を多用した独特のサウンド」とでてくる。言われてみればそうなのかなぁとは思うのだが、中高生の私の耳には、なんか知らんけどめちゃくちゃおしゃれでモダンな(死語?)メロディー、ハーモニー、リズムだった。「サン・ホセへの道」「恋よ、さよなら」「小さな願い」「恋の面影」「ウォーク・オン・バイ」・・・どれもこれも大好きである。
映画「明日に向かって撃て!」の主題歌「雨にぬれても」
バート・バカラックの代表作に、映画「明日に向かって撃て!」の主題歌「雨にぬれても」がある。原題は「Raindrop's keep fallin'on my head」だから直訳すれば、「僕のアタマに降り続ける雨粒」となるかと思う。しかし映画の中で、この曲が流れるシーンには一切雨が降らない。
このシーンでは映画の舞台である19世紀末、流行しだした自転車に乗ったブッチ(ポール・ニューマン)が相棒のサンダンス(ロバート・レッドフォード)の恋人エッタ(キャサリン・ロス)をデートに誘い、一緒に自転車に乗る。明るいメロディーに二人の笑顔、ブッチの曲芸まがいの自転車のり、なのになぜに「雨が降る」のか?
「雨にぬれても」の雨とは?
長いこと、私はこの意味がわからなかった。同時にブッチ、サンダンスの2人の男とエッタは三角関係?これは今でもわからない。しかし、ある日突然、「雨」とは二人の銀行強盗に降りかかるさまざまな厄介ごとであることに気がついた。
二人はワイオミングの優秀な保安官に追われているし、強盗仲間のうちには反旗を翻すものもでてくる。実のところ、悩ましい問題がいっぱいその頭に降り注いでいたのである。けれどもブッチは歌う。
But there's one thing I know
The blues they send to meet me won't defeat me
It won't be long till happiness steps up to greet me
だけど一つわかっていることがあるんだ。
憂鬱なことがあってもそいつらは、僕をくじけさせない。
そう遠くないうちに幸せが僕にあいさつをしにくるからさ
素晴らしい歌である。なのにこの意味がわかるまで、私は何十年も費やしてしまった。
【自撮動画】「雨にぬれても」を弾いてみた
バート・バカラック氏追悼の意味で「雨にぬれても」を弾いてみた。できるだけ明るく能天気な雰囲気が出ればいいのだが・・・出来はともかくいつ弾いても楽しくなる曲である。