夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

人種差別より認知症が気になった映画「ドライビングMissデイジー」

1989年のアメリカ映画「ドライビングMissデイジー」(原題:Driving Miss Daisy)

1989年のアメリカ映画「ドライビングMissデイジー」とは?

1989年のアメリカ映画「ドライビングMissデイジー」は、同年アカデミー賞の4部門で受賞した名作中の名作と言われる映画である。

元教師の気難しいユダヤ系老婦人デイジージェシカ・タンディ)と彼女の専属運転手をつとめる初老の黒人男性ホーク(モーガン・フリーマン)との長きにわたる心の交流を描いたハートウォーミングストーリーだが、なにせ往年の名画「風と共に去りぬ」さえ、奴隷制を肯定している、と批判を浴びる昨今である。この映画にも批判の矛先は向けられているのでは、と危惧しながら、ネットを徘徊した。

すると、やっぱりあるね。「人種差別的なこんな映画がアカデミー賞をとるとはけしからん」的な発言が。うーん、やっぱりそうとられるのか?

やんわりと人種差別の問題を提議しているようにみえるが?

私にしたら、この映画はやんわりと人種差別の問題を提議しているようにみえたんだけれど。だってホークは黒人であるがゆえに、こんなにハンディを背負っていたのだから。

  • 実際的なことに機転はきくが、文盲だった
  • デイジーのお供をするまでジョージアから出たこともなかった
  • 自動車での旅行中、給油所のトイレも使えなかった

しかし、最初はあれほど嫌がっていたデイジーがホークを全面的に頼りにするようになり、最後には「You are my best friend」と言うようでは、甘ったるい作られた美談に過ぎない、と思う人もいるようだ。

デイジーの「老い」が一番の関心事

しかし私にはこの映画、人種差別問題でカリカリするよりも、聡明でプライドが高い女主人公、デイジーが徐々に老いてゆくさまのほうにずっと興味が持てた。

まだ頭を体もシャンとしているときに、運転操作をあやまり、息子から車をとりあげられたところなど、今の日本の高齢者の自動車免許問題を彷彿とさせる。幸いにデイジーの息子は父親から受け継いだ事業で成功し、母親のために運転手を雇うことなど大した出費ではないのだ。

雇われた初老の黒人男性は、明るく、デイジーのキツい物言いもさらりと受け流し、有能なことこの上ない。

元教師をつとめたぐらいだから教育もあり、しかもマージャンでアタマを鍛えてそうなのに、デイジーはある日、記憶に混乱をきたし、ついに高齢者施設に入所することになる。見ている私には、こんなしっかり者でも認知症になるのか、と暗澹たる気持ちにさせられる。

しかし施設で暮らすデイジーが不幸というわけではない。彼女にはたぶん心配無用なぐらい資産があり、そしてときたま息子(この子が優しい!)やホークが見舞ってくれるからだ。いいなぁ、おカネに困らず、家族も友人もいる老後ってうらやましいなぁ。

平均的な日本人ならこの映画の人種差別の疑いよりも、老後のカネと健康、人間関係に関心が向くのは当たり前ではないだろうか。

ドボルザークの「月に寄せる歌」

音楽の面でもこの映画は収穫があった。色とりどりの花が咲く家でデイジーが刺繍をするシーンで流れているアリアがすばらしかったのだ。調べてみるとこれはドボルザークのオペラ「ルサルカ」の中の「月に寄せる歌」ということなので、さわりだけだが、ぜひお聴きいただきたい。

私はドボルザークの「弦楽セレナーデ」が大好きなのだが、これでまた彼の音楽で好きなものが増えた。まるで友人が増えたように嬉しい!

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