アルゲリッチってわかります?
先日のクラシックピアノレッスンで、レッスン冒頭の恒例となっている「毎日の練習12か月」を見てもらっていた時のこと、先生が突如、
「アルゲリッチってわかります?」とおっしゃった。
そのとき2分音符をレガートに弾くことに集中していた私はとっさに何のことかわからなかった。
この今弾いている楽譜のどこかに、アルゲリッチの写真が隠れているのか?
それとも「アルゲリッチ」とは私の知っているピアニストのマルタ・アルゲリッチのことではなく、私の知らない音楽表現でアルゲリッチというのがあるのか?
先週は「アッチャカトゥーラ」というのを習ったばかりだし・・・
1秒くらい間をおいてから、やはり「わかります?」は「知っていますか?」に変換してみようと思い、おそるおそるたずねた。
「あのう・・・女性ピアニストのマルタ・アルゲリッチのことでしょうか?」
アルゲリッチについてピアノより知っていること
多分、高齢者のなかには気位が高く、突如キレるひともいると聞いているから、私の知識のなさを暴いて自尊心に傷をつけてはいけないと先生は思われたのだろう。
しかし幸運にも、私はアルゲリッチを知っており、ピアノよりも若き日のその美貌に圧倒され、彼女の3女が撮った映画「アルゲリッチ 私こそ音楽!」のファンでもあり、彼女の3人の娘の父親たちも、それぞれ誰であるかも知っている。
そうや!一番知らないのは彼女の神技というべきピアノ演奏についてであろう。
そして、次の先生の謎の質問は、
「インスタされます?」
だった。
これははっきりNOである。もっとも「インスタ映え」なることばは聞いたことがあるが・・・
「インスタを見るとね、アルゲリッチの演奏時の手の動きを、ほんとうに至近距離のカメラで撮ったのがあるんですよ!」
アルゲリッチも重力奏法なのか?
先生はアルゲリッチの大ファンで、昔から別府の「アルゲリッチ音楽祭」を欠かさず、観に行かれているそうだ。
先生によると、アルゲリッチも昔は手の動きが大きかったそうだが、御年80歳を超える今となっては、手指は最小限にしか動かさない、実にムダのない動きで音色もまろやか、だからこそあの年齢になっても演奏活動ができるのだ、と深く感銘を受けたそうである。
「やっぱり、ロシアピアニズムというか重力奏法なんでしょうね!」
とおっしゃる先生。
ああ、重力奏法!!よく聞く言葉だが、私にはまだその真意がつかめていない。
わかっているのは、私の弾き方は重力奏法には遠く、手首を押して弾いているムダの多い弾き方であるため、長期にわたるとかならずやカラダのどこかに故障が生じるということである!
YouTubeでも見つかったアルゲリッチの神技奏法
正直、インスタグラムには登録したくなかった。
なぜかというと、この手のものでは、フェイスブックも途中で放り出したし、何かに登録するたびにパスワードやハンドルネームやらもう覚えきれなくて大変だからだ。
しかし今回はせっかく先生がすすめてくれたからと思い、アルゲリッチの奏法をできるだけ近くでみたいため、インスタに登録してみた。
登録自体は難しくも何ともない。
そして動画の本数もYouTubeに比べて多くなく、個々の時間も短いことから、アルゲリッチの奏法を撮った動画もすぐに見つけられた。
なるほどね。
便利といえば便利かもしれない。
しかしこのぐらいの動画ならYouTubeでも探せないことはない。
そして問題の核心は、これらの動画をみて「さて、私はどうするん?」ということだ。
だってこんなことができるなんて、やっぱりいい意味で全然フツーではない。
天才アスリートでしょ、こんなことができるのは。
普通の人がこれを真似しようと思ったら、絶対に指、手首、腕、肘、肩、背中、腰までおかしくなると思うよ。