私は音楽用語を習ったことがあるのか?
クラシックピアノの先生に紹介されて、「イタリア語から学ぶひと目で納得!音楽用語辞典」を買って読んでみた。
読む前に思ったのだが、だいたい私は音楽用語って習ったことがあるのだろうか?
公立の小学校・中学校・高校で? 実は習った覚えはまったくない。
先生は教えてくださったのかもしれないが、私の記憶にはさっぱり残っていない。
しかし小学校のとき、そのとき習っていたピアノの先生が、楽譜上の「rit.」を指し、
「これはどういう意味?」と聞かれたことはある。
わたしは1,2秒返答に詰まったが(だいたい反応の遅いこどもだった)、「ゆっくりすること」と言ったところ、幸いお咎めなしだった。
今では楽譜上でわからない単語がでてきたら、ネットで調べてコピーした楽譜に鉛筆で書きこんでいる。
その調子で今までことなきを得ていたが、音楽用語自体、自信があるわけではないので、迷わずこの「イタリア語から学ぶひと目で納得!音楽用語辞典」を購入した。
購入の決め手は可愛いイラスト入りだったからであるが。
この本で何を一目で納得できるのか?
本は音楽用語でよく使われるもののアルファベット順になっており、それぞれの用語について、左ページがイラスト、右ページがその説明文となっている。
イタリア語の音楽用語を日本語に翻訳するにあたっては、明治時代の先人たちのなみなみならぬ苦労があったものと思われるが、誤訳とまではいかなくても、「本来の意味からするとちょっとなぁ」というのがあるだろうということは、容易に想像できる。
案の定、翻訳上のちょっとした行き違い、そして単なる私の思い込みから、以下の用語を間違って解釈していたことがわかった。
音楽用語思い込み訂正編
- Allegro(アッレーグロ)
基本的な意味は「陽気な」「楽しい」「快活な」だそうだ。
私は単に「速く」の意味だと思っていたよ。なんでやろ?
- Andante(アンダンテ)
よく「歩くような速さで」って言うよね?でも本来のイタリア語には「歩くような」の意味はまったくないそうだ。翻訳がドイツ語を経由しているうちに、ちょっと本来の意味からずれてしまったみたい。正確には「ほどほどの速さで前に進む」ということらしい。
- Femata(フェルマータ)
イタリア人に「フェルマータって何のこと?」とたずねると、ほとんどの人が「バス停」と答えるそうだ。音楽用語では「一時停止」で止まった後、また動き出すエネルギーを持っていること、らしい。私は恥ずかしいな、へへへ。フェルマータというと、その音を長く伸ばすことと思っていたよ(!)
- Rubato(ルバート)
Rubatoは「盗まれた」という意味らしい。えっ?でも音楽では何を盗むの?それは時間だって。つまり時間を盗んで、メトロノームから離れて自由にテンポをゆったりさせたり、また速くさせたり、ということらしい。
へーっ 私はまた「テンポをテキトーに速めたり遅くしたり」だと思っていた・・・
日伊カップルと愉快なイラストレーター氏に感謝
私の数々のこれまでの思い込みを正してくれたこの本は、ピアニストの関孝弘氏と奥様でイタリア人でイタリア語講師のラーゴ・マリアンジェラー氏の共作ということである。
日伊カップルといえば、ヒデとロザンナしか浮かんでこない世代としては、「おお、知的で文化的な香りがするご夫妻」としかいいようがない。
それにNHKの語学テキストも担当されたことがある、イラストレーターのキムラみのる氏のイラストも私好みで、ユーモアに溢れていてすばらしい。
これからもボヤーっとしたリラックスタイムに、気軽な読み物として手にとりたい貴重な一冊になりそうである。