コンクール直前の練習はどうあるべきか
ピアノコンクールに出場されるみなさんって、直前はどれくらい練習されるのだろうか?
アマチュアのかたはよくわからないが、プロのかたは直前は練習の量を控え、できるだけリラックスして・・・なあんて記事を読んだことがある。
たしか故フジコ・ヘミングさんだったかな?
しかしプロのかたと私とでは、まるで比較にもならないし、参考にもならない。
その証拠にピアノコンクールを数日後に控えたきのうあたりから、私は急に悪あがきを始めた。
つまりいつまでたっても美しいトリルが弾けないバッハはちょっと脇へおいておいて、コンクールでひく「Recado Bossa Nova」に本腰を入れ始めたのである。
出たとこ勝負にも構想はある
今度のコンクール、ジャズ・ポピュラー部門で弾く「Recado Bossa Nova」については2度、師に聞いていただき、「とにかく軽く」というアドバイスをいただいている。
ところで私はジャズ・ポピュラーに関しては、市販のアレンジ譜や書き譜を使わず、自分のアレンジの、それも出たとこ勝負で弾いている。
出たとこ勝負とはいえ、だいたいの構想は決めているのだが。
- イントロはラフマニノフ風(あくまで、ふう)ルバートで。
- そのあとラテンのリズムで刻むヴァンプ
- 1コーラス目:テーマ。主にシングルトーンを使う。
- 2コーラス目:リリカルなアドリブを目指す。サビは和音を使って豪華に。
- 3コーラス目:テーマに戻ってブロックコード(和音)を多用し、ド派手に。
- エンディングは3回繰り返したのち、グリッサンドで迫力たっぷりに。
とまぁ、まことにおおまかなものだけれど。
ところが、直前の悪あがきをしているうちに、「これでいいのか?」と不安になってきた。
つまり、自分がこれまで決めた構想に疑問をもち、全否定したくなってきたのだ。
エディー・ゴーメの歌は甘いラブソング
ことのおこりは、「Recado Bossa Nova」が「The Gift」という英語タイトルでヒットの火をついたエディー・ゴーメの歌を真剣に聴いてから。
今ごろ、遅いわ!と思われるかもしれないが、これまでは主にインストのものばかり聴いていたからである。
歌詞に注意して聴いて見ると、Kiss me sweet というのが耳につく。
ということは甘いラブソングなんだね。
私はもっと神秘的な、道ならぬ恋らしきものを想像していたんだけれど。
なんか、イメージが違うなぁ。
もし1960年代のエディ・ゴーメのヒット版を覚えている、私より年長の審査員がいらっしゃったとしたら、私の弾き方に違和感を持つかもしれない。
まぁ、みなさんお若いかたばかりとは思うが。
即興には即興の心配がある
ああ、どうしょっかなぁ。
もし、スタートのラフマニノフ風イントロでヘンな和音を弾いてしまったら?
それよりか、緊張のあまり大きな音を出すのが怖くなって、しょぼいイントロではじめてしまったら、あとはどう続ける?
テーマのシングルトーンで、客席の「何これ?つまんないね」という雰囲気を感じ取ったら、方向転換してブロックコードをがんがん、グリッサンドにトレモロにトリルに、ありとあらゆる装飾音を繰り出すかもしれない。
まるでナチュラルメークではパッとしないので、アイシャドーごってり、アイラインを何重にもひき、つけまつげもバッチリというように。
クラシックのように、暗譜が飛ぶという心配はないが、即興で弾くジャズやポップスにもそれなりの心配があるものなのだ。