
出会ったボーカル女子は合唱からの転向組
きのうのセッションで初めて出会ったボーカル女子について書いておこうと思う。
そのひとは心斎橋のジャズスポットにふらっとひとりでやってきた。
やってきてすぐにホストさんやマスターとことばを交わしていたので、ここのスタッフ?とか思ったが、常連さんということがあとでわかった。
飾らないジーンズ姿で、コミュニケーション力も高く、私たちとすぐ会話するようになった。
聞けば彼女がジャズにドはまりしてからまだ1年。
ボーカルレッスンもとっているという。
そういう話声からして、私は「歌えばいい声なんではないかな?」と思った。
低めの落ち着きのある声だったからである。
聞けば10年超も合唱をやってきて、パートはアルトの高いほうだということ。
そしてどうしても合唱の歌い方が抜けきらず、ジャズを歌うのに苦労しているとのことだった。
ではどういう点で困っているのか?
彼女自身の分析によれば、合唱では声質も揃えないといけないが、ジャズボーカルだと声の個性が必要となる。
その切り替えがどうしてもうまくいかないのだと言う。
これはなんとなくわかる気がする。
私も合唱を少々かじったことがあるから。
たとえば合唱だと、ワンフレーズをくせなく、レガートに歌うのが普通だと思う。
ところがジャズでは、歌詞のことばによってアクセントをつけたり、声音も変えたりするのがテクニックとされている。
そして声質も、ジャズでは低音でハスキーが王道である。
最近はジャズボーカリストも変わってきて、ステイシー・ケントみたいな声のひともいるが、それでもふつう、ジャズボーカルを習う人は、エラ・フィツジェラルド、サラ・ヴォーン、カーメン・マクレエ、ヘレン・メリルのあたりを目標とするのが普通ではないか。
私は一時、加齢のせいで声が低くなってきたと喜んでいたが、結局、そんなに低くないことがわかった。
一番出しやすいのは、ソから上のドぐらいまで。
たぶん地声ではなく裏声。
そして同じ音をだしていても、人よりカン高く聞こえる(気がする)。
大学入学当時、新入生の私の声を聞いてメゾソプラノに配属した先輩の耳はやはり間違っていなかったようだ。
マーサ三宅の孫弟子だった!
そして合唱からジャズに転向したボーカル女子が歌ったのは、
- Taking a chance on love
- My one and only love(たったひとつの恋)
- On the sunny side of the street (明るい表通りで)
- On the street where you live(君住む街で)
いやぁ、いい声でうまかったねぇ。
とても習って1年とは思えない。
そしてこの声、誰かに似ている、と思った。
あ、あのひとだ!
結構最近に亡くなった、日本のジャズボーカルの草分け的存在。
大橋巨泉の元妻。
それで私が、彼女に、
「マーサ三宅の声に似ていますね!」
というと、彼女はひどく喜び、
「実は、かつてマーサ三宅のお弟子さんだったかたに習っているんです!」
とのこと。
ああ、やっぱり!
それでは、マーサ三宅の歌で、「Taking a chance on love」を聞いて見よう。
低い声を目指した淡谷のり子とナット・キング・コール
いいなぁ。
こんなジャズ向きの声を持っているなんて本当に羨ましい。
私の声はとてもこんなのにかなわないから、もうジャズボーカルはあきらめようかしらん。
いやいや、少なくとも天神橋筋商店街を制覇し、大阪の老舗ジャズクラブで行われる発表会の舞台を1度踏むまでは諦めずにがんばろう。
それに過去に大歌手だと言われた人だって、必ずしも自分の声に満足していなかったのだ。
たとえば淡谷のり子。
クラシックの声楽を学んだ彼女はブルースを歌うにあたって、酒とタバコで喉を痛めてから録音に挑んだそうだ。
(でもこの人の歌い方は全然好きではなかった。私の子ども時代、どうして彼女の歌がもてはやされたのかさっぱりわからなかった。たぶん当時の芸能界の重鎮だったから?)
そしてナット・キング・コール。
もうこのひとの甘い声は文句のつけようがない。
なのに彼はタバコを吸えば、声が低くなると信じて、ヘビースモーカーであり続け、結局45歳という若さで、肺がんで亡くなってしまった。
私は酒もタバコもだめ。
だから持って生まれた声で間に合わせるしかない。
それでは最後にナット・キング・コールのすばらしい声で「When I fall in Love」を。













