夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

「イエスタディ」のアキくんに会ってみたい

 

 

「女のいない男たち」で一番好きな「イエスタディ」

村上春樹の短編集「女のいない男たち」に収録されている、「ドライブ・マイ・カー」が映画化され、世界各国で名誉ある賞を受賞しているとのこと。

喜ばしい話であるが、この短編集で私が最も気に入っているのは、「ドライブ・マイ・カー」ではなく「イエスタディ」なので、なんだかなーという気持ちもある。

そうはいっても「イエスタディ」の面白さは、関西人の驕りかもしれないが、ネイティブ関西人にしかわからないのではないか、と危惧している。

だから、全国区はおろか、今や世界制覇を目指さなければならない映画では、「イエスタディ」では、あらゆる人種の観客の支持を得るのは難しいだろう、

と想像する。なので仕方がない、というよりか、しゃーないわな。

「アキくん」にモデルはいるのか?

「イエスタディ」の登場人物は3人しかいない。

あきらかに著者の村上春樹がモデルと思われる、早大生の「僕」と生まれも育ちも田園調布なのに、関西弁しか話さない、浪人の「アキくん」。そして、アキくんの幼馴染で、恋人の上智大生「えりか」。

アキくんは2浪中なのだが、自分探しの葛藤に埋没しているため、受験勉強にも身が入らない。そしてなぜか、相思相愛の恋人にたいしても、一線を超えられないでい・・・というまことにクセがあり、それだからこそ愛すべき存在なのだ。

このアキくんって、モデルがいるのだろうか? 標準語を話したがる関西人はフツーに存在するが、関西弁を話したがる東京人には生まれてこのかた、遭遇したことがないので、私には村上春樹の100%創作ではないか、と思われるけれど。

「イエスタディ」の替え歌問題

「イエスタディ」のなかで、アキくんが風呂にはいったときに歌う、ビートルズの「イエスタディ」の替え歌がある。

これは文藝春秋に掲載されたときは、全編載っていたそうだが、本ではほんの一部しか載っていない。なんと、歌詞の改作に関して著作権代理人から「示唆的要望」を受けたそうである。

え、なんで? ポール・マッカートニーは日本語で「イエスタディ」を歌ってたっけ?と頭の中が疑問符になるのだが、そういうことではないらしい。私には理解しがたい複雑怪奇な論理によるものだろう。

まるでアキくんのように歌っている動画発見!

アキくんの歌う「イエスタディ」では、「昨日は/あしたのおとといで おとといのあしたや」からはじまる。

「ホンマやなぁ~ 言われてみたらそうやなぁ~」と、私は最初にこれを読んだとき、感心してそう思った。

本で削除されていた歌詞の続きは、ネットで調べたら簡単に見つかり、そして、ますますこの短編が好きになった。

探し物は探してみるべきもので、YouTubeでこの歌詞の「イエスタディ」を歌ってアップしているかたがおられたので、ここでご紹介しておく。いかにもアキくんを思わせる、いいお声と、しゃーないな、と思わせる歌い方だと思う。ふだん、YouTubeにコメントなど書かない私だが、思わず絶賛コメントを書いてしまった。

 

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「枯葉」はジャズ味?シャンソン味?

 

『枯葉よ~♩』の舞台はどこ?と聞かれても

娘が一時フランスに行ったりしたため、ウチの両親は60過ぎてから、十何時間の飛行時間に耐え、数回フランスまで来たことになる。

「本当にお疲れさんでした」なのだが、特に母は、パリでも元気そのもので、秋に来た時には、「ねぇ ゆめちゃん、 『枯葉よ~♩』の舞台はどこなん?」と何度ともなく、私に聞いていた。

私は「知らんがな、そんなこと」と思ったのは確かだが、とにかく母は、我が家では女王様だったので、適当にお茶を濁す返事をしていたと思う。

母亡き今となっては、あのとき適当に、「この近くのアパートに、イヴ・モンタンが住んでてんけど、ある日 枯葉がはらはら落ちてくるのが、ベッドから見えてんて、そんで・・・」とか、いい加減なハナシをでっちあげておけばよかった。母はさぞかし満足しただろうに。

イヴ・モンタンで味わうシャンソン味「枯葉」

イヴ・モンタン(Yves Montand)は1991年に70歳で亡くなるまで、歌手としても俳優としても、大成功を収めたかたらしい。

また、艶福家としても有名で、若いころはエディット・ピアフの愛人だったし、シモーヌ・シニョレという有名女優を妻にもちながら、マリリン・モンローとも浮名を流したとか。なおかつ、政治活動にも熱心だったそうで、忙しい人やねぇ。

あらためて彼の「枯葉」を聞いてみると、このスタイルで立派な完成品だと思う。言ってみれば、「シャンソン味」でいいと思う。私ならジャズにしようとは、まったく思いつかない。歌詞も、捨てた捨てられた、の演歌風でないところがいいし。

・・・僕は君を愛していた。君も僕を愛していた。

けれども人生は愛し合う二人を分け隔ててしまった。

ゆっくりと、音もたてずに・・

 

 

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「枯葉」はいかにしてジャズになったか

シャンソンの「枯葉」がどうしてジャズのスタンダード「枯葉」にもなったかについては、聞かれれば今の私こそ、「知らんがな、そんなこと」といいたい。

とにかくいろいろな人があらわれ、さまざまな「枯葉」が生まれ、今ではジャズを志す者は必ずといっていいほど、「枯葉」を演奏するようになった。

クラシックとジャズの違いは多々あるけれど、演奏者の立場から考えると、例えば、クラシックでは、ショパン英雄ポロネーズやバラードが弾ける人は、技術に多少(雲泥?)の差があっても、上級者と決まっている。

ところが、ジャズでは初心者の「枯葉」もあり、プロの「枯葉」もあり、各々のリズム、和音もそれぞれでOKなのだ。だから同じ人でも、現在弾いている「枯葉」は、過去の「枯葉」とまったく異なるかもしれない。こういうところが、ジャズの面白い点だと思うのだが。

ウィントン・ケリーでスィングするジャズ味「枯葉」

「枯葉」のジャズの名盤は、いろいろあるけれど、私にとっては、やはりウィントン・ケリーWynton Kelly)のアルバム、「Full View」にはいっている「枯葉」が一番だ。

もうこの「ジャズ味」は一度味わったらやめられない。だから、こんな風に弾けるようになりたい、と思って日々あがいているのだよ。

 

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ビートルズで思う、イントロよければすべてよし

 

アンサンブル練習会の日取りが迫ってきた

ジャズピアノ&ボーカル教室の生徒さんが集まって、ドラムとベースのかたにはいってもらう、アンサンブル練習会の日取りが迫ってきた。

前回について、記事にしたのが以下である。

kuromitsu-kinakochan.hatenablog.com

 

前回、私は3曲もピアノトリオで弾いたのだが、あとで他の生徒さんに聞くと、ピアノトリオ2曲プラス初見歌伴の人が多かったようだ。なぜ、私だけがあの日、初見歌伴を免除されたかというと、多分初参加だったからではないだろうか、

「初参加なのに、初見歌伴をさせては可哀そう。」と先生が思われたのではないか、と想像する。

だって、初見というのはやはり緊張するし、歌伴となるとさらに負荷が大きくなる。ボーカリストがどんなキーで歌うのか、あらかじめわかっていればいいのだが。

それにああ、イントロ!イントロを決めるのは、やはりピアニストだろうね。カッコいいイントロは望めないにしろ、ボーカリストがはいりやすい弾き方をしなければならない。

先生も、若かりし駆け出しピアニストのころ、ボーカリストに「あんたのイントロやったら、はいられへんわ!」とよく叱られたそうだ。

ボーカリスト怖い~~おまけに先生の奥様(ボーカリスト)の生徒さんは、みなさんプロ顔負けに歌がうまいのだ。こういう場合、どういう練習をしたらいいのだろう。

「ジャズピアノがうまくなる理由ヘタな理由」

とりあえず、いまできることとして考えたのは、お気に入りの教則本、「ジャズピアノがうまくなる理由ヘタな理由」の「イントロを作れない」「エンディングを作れない」の章を、A5からA4に拡大コピーし(A5では老眼で見えない)例題パターンをいろいろなキーで練習することだ。

いろいろなキーといっても、12のキーまではできないので、ヤマをはってC、F、B♭、E♭、A♭、G の6つに絞ることにした。

 

While my guitar gently weeps のイントロで胸が締めつけられる

イントロって本当に大事だと思う。有名な曲では、イントロ2小節まで行かないぐらいでも、なんの曲かわかるし、イントロを聴いただけで、ワクワクする曲ってあるものだ。

わたしのイントロいち押しの曲は、ビートルズの「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」(While my guitar gently weeps)。

ビートルズの曲は、すべて中学生の頃に一生分聴いたため、今ではほとんど聴くことはないが、この曲だけはいまだに時折聴く。そしてこのイントロを聴くたび、胸が締めつけられる想いがするのだ。(心不全か?)

コード進行はいたって簡単なのにね。名曲ってこうなのだ。

 

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【自撮動画】パスピエに費やした苦闘の21時間を記録

 

ドビュッシーパスピエを自撮りする

前々回の記事で書いたが、苦労したドビュッシーパスピエは、バッハコンクールの準備を優先させるため、しばらくお預けとなってしまった。

まったく弾かないでいると、間違いなくゼロ地点に戻ってしまうので、一日一回は弾こうと思うが、全体の出来は後退する一方だと思う。なので、現時点の出来を記録するために自撮り動画をとることにした。本当はもっと、いい出来になってからジャーーーーンと公開したかった、という気持ちもあるのだけれど。

タイトルの「苦闘の21時間を記録」というのはちょっと大げさだな。私にだって、タイトルを盛って、少しでも多くの人にブログを見てもらいたい、という気持ちがある証拠である。

先生いわく、「前回のレッスンではカタチにもなっていなかったけど、よく追いつきました」とのこと。技術的なことでは、

  • 指示はアレグレットなのだから、テンポはこのままでよい。
  • 全体の流れは良い。
  • 音色の変化をつけるべし。今だとあまりにも単調。

ということだった。私が特別気にしていた左手スタッカートについては、

  • 手首が下がらないよう気をつける。
  • 指先が上に反ることがあるから、この癖をやめる。
  • 指を鍵盤に置いたままおろす。

というアドバイスをいただいた。

 

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プロのピアニストは人々を驚かせないといけない

2015年のショパンコンクールの覇者、チョ・ソンジンさんがこの曲を高速四分音符=190で弾いていることを、先生に言うと、「それはアルバムの構成も考えているんじゃない? ひょっとして、『月の光』はゆっくりで弾いているかも。 ピアニストもショーというわけではないけど、人々をあっと驚かせないと いけないから、いろいろ効果を考えているのよ。特にもうコンクールを卒業したピアニストは、審査員の気に入るようではなく 自分の好きなように弾いていいわけだから。」と、私には驚くべき見解を披露してくださった。

「月の光」の適正速度とは

余談になるが、日本人はゆっくりの「月の光」を好むそうだ。ところが、パリ音楽院のお偉方によると、「月の光」の楽譜指示はアンダンテだから、アダージョのようにゆっくり弾くのはよろしくないそうだ。

サンソン・フランソワも『月の光』はあっさりと弾いていると思うわよ。」と、先生がおっしゃっていた。

サンソン・フランソワチョ・ソンジンの「月の光」対決

家へ帰って、サンソン・フランソワの「月の光」を聴いて、なぁるほど、と思った。特に出だしがあっさりしていて、私にはちょっと物足らないかなぁという感じ。

 

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反して、チョ・ソンジンさんの「月の光」は、出だし、思い入れたっぷりで、ドラマのBGMにも使えそう?そして、全体的に言うと、トータル単純計算で、サンソン・フランソワより43秒長いのだ。

はて、学習者としてはどうしたものやら。ところで、作曲者のドビュッシーはどっちが好きなのだろう??

 

 

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フレンチポップスがない仏映画「最強のふたり」

 

映画「最強のふたり」とは

2011年のフランス映画「最強のふたり」(原題:Intouchables)は、近年では珍しく、フランスでも日本でも大ヒットした映画である。

Wikiによると、フランスでは、2011年に公開された映画の観客動員数1位、日本では、日本で公開されたフランス映画の観客動員数歴代1位という快挙を成し遂げ、主演のオマール・シーの人気を決定的にしたものといってよい。

実話をもとにしたこの映画のあらすじは、簡単に述べると、

パリに住む大富豪のフィリップはパラグライダーの事故で首から下が動かせない障害者。その気難しさから介護人が長続きせず、新しい介護人を募集していたところ、失業保険の延長だけを目的にした、スラム街出身の黒人青年、ドリスが面接にやってくる。その率直さが気に入ったのか、フィリップはドリスを雇うことを決め、やがてお互いの生まれや育ち、環境、趣味嗜好の違いを超えた絆がふたりに間に生まれる・・・

最強のふたり」予告編はこちら↓

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映画で使われたアース・ウィンド・アンド・ファイアーの曲

この映画では、アフリカ系カメリカ人のポップバンドである、アース・ウィンド・アンド・ファイアー(Earth, Wind & Fire)の曲が効果的に使われている。

まず、映画の冒頭場面では、「September」。

 

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次に、フィリップの誕生日パーティーで、フィリップの好きなクラシック音楽を聴いた後、ドリスが「今度はオレの音楽を聴いてくれ!」と言って踊りだす、「Boogie Wonderland」。

 

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どうして監督はフレンチポップスを使わないのか

私はアース・ウィンド・アンド・ファイアーが大好きだ。現に、自分のPCのiTunesには彼らのベストディスクがはいっていて、定期的に聴いているし、ドリスが踊る場面はYouTubeで何回も見た。

でも、ちょっとひっかかることがある。それは、過去にはフランス映画というと、フランシス・レイミシェル・ルグランという巨匠が音楽を提供していたのに、「最強のふたり」をはじめ数々のヒットを飛ばしているエリック・トレダノオリヴィエ・ナカシュ両監督はいつもアメリカンポップスを使っていることだ。

「Nos jours heurex」ではマイケル・ジャクソンだし、「セラヴィ」ではボーイズ・タウン・ギャングとかね。音楽に国境はないのは確かだけれど、世界中がアメリカンポップスで埋め尽くされている近年では、私としては、フランス映画には一味違ったフレンチポップスを期待したいのだが。

ダンサブルな音楽ではクロード・フランソワがあるし、ロックっぽいのではジョニー・アリディーもいるけど、そういうのって今のフランスの若者には多分、ダサいということなのか。わかる気もするけどね。なぜなら私も若いころは、昭和歌謡はダサいと思っていたからね。でも今では、そんなに悪くはないと思っているよ。それとも、やっぱりアメリカンポップスでないと、世界的に売れないからなのかなぁ。それだったらちょっと淋しいなぁ。

そういうわけで、誰も難癖をつけない大ヒットフランス映画に、あえて注文をつけてみた。

 

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