「町の小さな靴屋さん」のモトは「Le petit cordonnier」
きのうの記事で、NHKみんなの歌の「町の小さな靴屋さん」の元歌はシャンソンであることを書いた。
そのシャンソンとは戦後、パリでずいぶん人気を博したといわれるフランシス・ルマルクが1956年に発表した「Le petit cordonnier」(小さな靴屋)だそうだ。
この曲もよくあるパターンなので驚くにはあたらないが、歌詞はずいぶん日本の「町の小さな靴屋さん」と違う。
フランシス・ルマルクが歌う「Le petit cordonnier」
「Le petit cordonnier」(小さな靴屋)の歌詞要約
歌詞の要約はこうである。
小さな靴屋を訪れた美女は、店にあったある靴が欲しくなった。
靴屋は「お代はいらないから、僕とダンスを踊ってくれ」という。
美女は靴屋をバカにしていたが、靴が欲しかったので、靴屋の要求を受け入れた。
一張羅を着てめかしこんだ靴屋が美女にダンスの相手を申し込んだところ、美女は靴屋を鼻でせせら笑った。
すると美女が3歩も歩かないうちに、靴屋がかけた魔法のせいで彼女はダンスがやめられなくなってしまい、朝まで踊り続けることになってしまった。
靴屋をバカにした美女は後悔し、彼に謝罪し、一生を彼とともにダンスをして過ごすことを誓う。
とりあえずはハッピーエンドというところか?
でも、こんなカップルうまくいくはずはないと思うけど。
だいたい「金はいらないから俺の女になれ、さもないと魔法をかけてやる」と靴屋が言っているようで、NHKみんなの歌を楽しみにしている日本のよい子には、あまりふさわしい歌詞とは思えない。
だから訳詞を担当された音羽たかし氏のセンスはすばらしいと思う。
「Le petit cordonnier」のモトはアンデルセンの「赤い靴」
ところが、このシャンソンはアンデルセンの「赤い靴」という童話がモトであることを、シャンソン歌手である朝倉ノニーさんの、以下のサイトで知った。
詳しい歌詞と和訳は以下を参照されたい。
朝倉ノニーの<歌物語> | 小さな靴屋さんLe petit cordonnier
アンデルセン童話ってあらためて聞かれても、どんなのがあったか覚えていないけれど、パン屋さんの名前になるぐらいだから、親しみやすい、優しい気持ちになれる童話だというイメージがあったのだけれど。
ところが・・・
「赤い靴」は怖い。
現在では「青空文庫」で読むことができるので、ご興味のあるかたは一読されたい。
この童話をものすごく簡単にすると・・・
「赤い靴」の魅力に魅せられた少女が、赤い靴を履きたいという欲望のあまり、恩あるひとに報いることもできず、踊り続ける呪いをかけられてしまう。少女はついに足首を切り落とし、懺悔の祈りを続けることによってようやく神のもとに召されるという話。
これって19世紀のキリスト教道徳観に基づいたものなのか?
- まず奢侈贅沢をつつしまなければならない。
- 虚栄を張ってはいけない。
- 恩ある人には恩を返さなければならない。
- さもないと、とんでもなく不幸な目にあうだろう。
- しかし、だからといって天国に行く道が閉ざされたわけではない。
- 神への許しを乞う祈りを続ければ、天国に召されることも可能である。
なんか釈然としない。
贅沢をしている有名人、セレブ、そしてそれを誇ってやまぬひとなんかゴマンといるのに、その人たちに呪いがかけられているとも思えないし、贅沢と虚栄のせいで足を切り落とさないといけなくなるなんて、事故、病気その他やむにやまれぬ事情で足を失った人に対して失礼ではないか?
あれ、最初はピティナステップのステージで履く靴で悩んでいたのに、なぜか全然違うところにきてしまったような・・・