ベートーヴェンの「ロンド・ア・カプリッチョ ト長調作品29」
きのう、手が届かない箇所がある曲は遠慮したいと書いたが、これに勝るとも劣らぬ割合で、できれば避けて通りたいのが、テンポの速い曲である。
もっともすべてのピアノ曲が、指定速度にならって弾かれるべきとは思っていない。
しかしやはり、テンポが速ければ速いほど、その曲の魅力が燦然と輝く曲というのはあると思う。
そのなかのひとつが、ベートーヴェンの「ロンド・ア・カプリッチョ ト長調作品29」(俗称:失くした小銭への怒り)である。
どんな曲かというと、ご存じないかたも多いようなので、以下にWikiの説明文を引用させていただく。
ベートーヴェンの偉大な作品群の一つというわけではないが、聴衆受けがするため、たびたび演奏されている。冒頭から急速なト長調の進行で始まる。ロンド形式のため、途中でト短調・ホ長調など従来どおりの転調展開をする。2/4拍子で速度が速く、右手部もが広い音形で展開するので演奏は難しい。節度ある演奏と奇想曲の曲風の両立が奏者に求められる。
アリス=紗良・オットさんによる模範的な演奏
この何曲を軽々と弾いていらっしゃるのが、アリス=紗良・オットさん。
すばらしい演奏だと思う。
フランス語放送で使われていたロンド
ところでこの、万人に知られているわけでない曲を、どうして私が知っているのか?
それはフランス語放送、Radio Classique に「Des Histoires en Musique」(音楽のお話)というすばらしいポッドキャストがあり、その中の一話、「Pourquoi le chat n'aime pas la souris ?」(どうして猫はねずみが嫌いなのか?)で、このロンドがBGMとして使われていたからである。
これはもともと、子供向けの番組ということだが、フランス語学習者には大変ためになる。
フランス語学習者でクラシックファンなら垂涎の番組なので、できればYouTubeにアップして、字幕もつけてほしいのだが。
でもそういうのがないのが、フランスらしいというか何というべきか・・・
私の遊び計画はこのように頓挫した
今から5-6年前、このお話に夢中になった私は、全文をディクテ(書き取り)し、わからないところは当時習っていたフランス語の先生と、夫ちゃんの助けも借りて完成させた。
そしてできあがったのを、丸暗記したのだ!
それは私の壮大な遊び計画の一環だったのだ。
別に誰に聞かせるわけでもないのだが。
ただ、自分のフランス語朗読にあわせて、自分で弾いた「ロンド・ア・カプリッチョ ト長調作品29」を二重録音すれば、さぞかし面白いだろう、と思ったのだ。
が、しかし・・・
ああ、この曲はあまりにも難しすぎた!!
では、「Pourquoi le chat n'aime pas la souris ?」(どうして猫はねずみが嫌いなのか?)のあらすじは以下の通り。
昔むかし、ねずみは腕のたつ仕立て職人で、ネコはその重要な顧客だった。
冬も近くなったある日、ネコはふかふかの布地を持参して、ねずみに「この生地でオーバーをつくってほしい」と頼んだ。
ねずみは引き受けたが、まずその生地のふわふわしておいしそうなのがたまらず、誘惑に駆られて、その生地を少しずつ食べてしまったのだ!
一方、いつまでたってもオーバーができあがらないことに業を煮やしたネコは、ねずみが生地を食べてしまったことを突き止め、怒り心頭に発し、ねずみを追いかけて食べようした。以来、ネコはねずみの天敵となったのである。