映画「キネマの神様」は期待以上
映画「キネマの神様」はずいぶん前にNHK BSで放映していたのだが、録画したまま長い間放置していた。
というのも、この映画は最初主役に決まっていた志村けんさんがコロナでお亡くなりになり、代役として沢田研二が演じた、ということ以外、いい評判も悪い評判も不思議に耳にする機会がなかったので、面白いかどうか自信がなかったからである。
それに私は原作の小説も読んでいない。
お亡くなりになった志村けんさんについては、人気絶頂期であったドリフターズの番組も、当時苦手だったので見ていないから、ほとんど印象がない。
沢田研二については、それはそれはもう、私の10代-20代にかけて、好むと好まざるとにかかわらず、彼の姿と歌はほとんど毎日耳にした。
しかし演技はどうかな~
私はどちらかと言えば、奥様の田中裕子の大ファンなのだが・・・
ま、しかし、結果オーライだ。
この映画、本当に良かったし、心に残るセリフがいっぱいあった。
さすがは山田洋次監督・脚本である。
新旧を代表する俳優が出演
この映画には、宮本信子、寺島しのぶ、リリー・フランキー、小林稔侍といった往年の主役クラス、名脇役が名を連ねていて、「さすが松竹100周年記念!」と思った。
しかしほとんどの若い観客は、菅田将暉、北川景子、野田洋次郎、永野芽郁などの若い俳優さんを見に来ているそうだ。
もう30年以上、ほとんどテレビドラマを見ていない私は、これらの若い俳優さんを初めて見、
「これからはこういった人たちが日本映画をささえていくのだなぁ」
という感慨を持った。
もちろんそれなりに浮き沈みのある業界だから、あと30年後も彼らが銀幕に出ているかどうかはわからないけれど。
特に北川景子が演じたのは、往年の大女優、原節子がモデルなのだろうか?
原節子というかた、美人だったは思うのだが、私の個人的感想ではちょっとお顔が日本人離れしているような気がする。
ひょっとしてメイクの効果もあるのかもしれないし、おふたりとも実際に拝見したら卒倒しそうな美人であることは間違いない、と思うのだが。
山田監督による小津安二郎へのオマージュか
映画の主人公、ゴウには山田監督が自らの映画論を言わせているような気がしてならない。
というのも映画中、ゴウに
「娘が嫁にいってしまって淋しい(小津安二郎の『晩春』?)なんていう映画ではなくて、乾いた映画、ドライな喜劇、思い切ってファンタジックなストーリーを撮りたい!」
と叫ばせているからだ。
また小津作品をもっと見ていたら、もっとこの映画のことがわかったのになぁ、という気もする。
北川景子演じる女優、桂園子が、
「紅茶を飲むシーンで、監督からカップを2回半まわして、と言われたけれど、2回だけにしたら『2回半と言いましたよ!』と注意された」
とぼやいたが、それは1951年の映画「麦秋」の下記のシーンだろうか?
ジュリーに歌ってほしかった
映画の後半では、沢田研二が志村けんのヒット曲「東村山音頭」を唄って、これがたいそう評価が高いようだ。
しかし私はやはり沢田研二、ジュリーには彼の持ち歌を歌ってほしかった。
あの日あの時、彼は志村けんよりも、ずっとずっと輝いていたのだよ!
過ぎ去った月日を懐かしみ、彼のヒット曲のなかで一番好きな「勝手にしやがれ」を貼っておく。