
シナトラが出演している映画「地上より永遠に」
NHKBSで放映していた映画「地上より永遠に」の製作年は1953年と古く、おまけにカラーではない。
映画「風と共にさりぬ」はたしかそれより前に製作されたはずだが、カラーなのに。
でも「地上より永遠に」も見てみようかなぁ、と思ったのは、レビューがことのほかいいし、アカデミー賞をいくつももらっているみたいだし、何よりフランク・シナトラがでていたからだ。
しかし私はとりたててシナトラのファンとは言えない。
彼は90年代まで存命で、その功績は光り輝いていたのだが、私にとっては「マイウェイを歌うおじさん」でしかなかった。
それに映画「ゴッドファーザー」で、彼をモデルにした歌手がマフィアと関係があったと描かれていたので、「なんか胡散臭いやっちゃなぁ」と思っていた。
しかしスタンダードジャズをやっていると、彼がほとんどの曲をカバーしていることに気づいた。
ジャズ歌手というジャンルにははいらないはずなんだけどね、どうしてだろう?
それだけアメリカのエンタメ界での影響力が大きかったということだろうか?
マッジョ(演:シナトラ)が下手クソなピアノを罵倒する
映画「地上より永遠に」はベストセラーになった文芸作品を土台にした映画のようだ。
あらすじをこれ以上ないくらい簡略化していうと、真珠湾攻撃前夜のハワイに駐屯するアメリカ軍兵士の過酷な日常と、2組の男女の複雑な恋愛関係を描いたものである。
女優は光り輝く美しさのデボラ・カー、男優陣はモンゴメリー・クリフト、バート・ランカスター、そしてこの作品でアカデミー助演男優賞を受賞したフランク・シナトラである。
シナトラの役マッジョは主役のモンゴメリー・クリフト演じるプルーウィットの味方で陽気なイタリア系だが熱くなるのも早い。
彼はクラブで「太っちょ」のジャドソンが弾くピアノがうるさいといって喧嘩になる。
ジャドソンはストライド奏法でラグタイムを弾いているのだが、上手とまでは言えなくてもそれほど下手ではない。
それに私なら「ヘタくそ!」といわれたら「ごめんなさい」とすぐ引き下がるが、ジャドソンはそんな男ではない。
その場面が↓なのだが、この諍いがのちのちまで尾をひき、マッジョの運命を狂わせることになるのだ。
ピアノにクレームをつけるととんでもないことになるぞ、ということか?
それにしてもストライド奏法はむずかしいよなぁ。
シナトラにはブルースに参加してほしかった
シナトラは生涯で50本の映画に出演したそうだが、なるほど本業は俳優といってもいいぐらいの芸達者ぶりである。
喧嘩、泥酔、瀕死などさまざまな顔を見せてくれるのだが、それでもどこかで私は彼の歌が聞きたかった。
たとえば兵舎で数人がブルースを歌う場面がある。
ブルースといっても、日本で知られた淡谷のり子の「別れのブルース」なんかではなく、アメリカで黒人霊歌や労働歌から発展した12小節の音楽である。
↓はその「Reenlistment Blues」。
ここでワンフレーズでもシナトラが歌ってくれたらなぁ、と期待したのだが・・・
鎮魂のトランペットに涙する
シナトラの歌は聞けなかったが、この映画ではすばらしいトランペットが聞けた。
盟友のマッジョの死を悼んで、モンゴメリー・クリフト演じるプルーウィットが涙を流しながらトランペットを吹くシーンである。
いい音だなぁ、トランペットって。
ピアノにはない持続音が、骨の髄まで染み渡る気がする。
結論:いい映画だったよ。真珠湾攻撃がなければもっとよかったんだけどね、日本人としては。