夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

働きたくないシニアにはオススメしにくい映画「マイ・インターン」

2015年のアメリカ映画「マイ・インターン

マイ・インターン」はこれまでと違った新しい視点の映画

2015年のアメリカ映画「マイ・インターン」(原題:The Intern)はなかなか評判の高い映画らしい。なんでも女性上司のもと、シニア・インターン制度で雇われることになったシニア男性が、最初は社内で浮いた存在であったものの、持ち前の機転と誠実さでみんなから好かれ、女性上司の信頼と友情も勝ち得ていく、という今風のストーリなのだ。

なるほど、男性上司のもと、朝ドラにでてくるような、明るくてお茶目な若い女性が彼の秘書となり、同時に社内の人気者になる、というストーリーよりは斬新だ。それに何といっても主演は私の大好きなロバート・デニーロなのだ!お相手役はこれまた人気のアン・ハサウェイ。話がそれるが、この人の歯を存分にみせながらニーッと笑う笑い方はジュリア・ロバーツそっくりだね。これはハリウッド定型の笑顔なのか?

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大半のシニアにとって働くことは「生きがい」らしい

主人公のベン(ロバート・デニーロ)は70歳。会社を退職し、妻にも先立たれたのち、悠々自適の生活を送っていたが、何か物足らないものを感じ、社会とのつながりを求めてジュールズ(アン・ハサウェイ)が経営する通販アパレル会社のシニア・インターン制度に応募することになる。

ベンの定年退職後の心理状態は、多くの日本人定年退職者のものとあまり変わらないようだ。すなわち、趣味のサークル等で活動していても、何か物足らなくて、もっとアドレナリンが分泌されるようなもの=仕事を求めているらしい。

働くとピアノが下手になる悪循環

ここで私なんかはちょっと居心地が悪くなる。会社をやめてからもう4年ほどになるが、一度たりとも会社が懐かしいとか、もう一度働きたいと思ったことはない。

だいいち、働きだしたらまたピアノを弾く時間がなくなってしまう。これはまったく私の私的感想だが、もしピアノがうまくなりたいと思えば、一日最低一時間の練習時間は必要だと思う。別に弾いていて楽しければよい、というかたはそれでいいのだが、私は何でもうまくならないと面白くない、と感じるタイプである。だから勤めているときは一日平均10分ほどしか練習時間を確保できなかったから、練習できない➡下手になる➡面白くない➡弾かなくなる➡もっと下手になる、という悪循環の繰り返しだった。

ピアノレッスン再開後、2年たってやっとようやく前の水準に戻りつつあるなぁ、と感じるくらいだから、仕事で社会とつながるぐらいのメリット?で、ピアノの上達を諦めたくないのだ。

通販アパレルは浮き沈みの激しい業界だ

アパレル業界は浮き沈みの激しい業界だ。特に若い女性向けの商品をターゲットにしていると、何があたるのかがわからず、シニアの感覚がビジネスに通用するとはあまり考えにくい。

ベンも購買結果の分析ならできるだろうが、次に当たる企画を考えろ、と言われると相当困るのではないか?だから、社内でのベンの役割は、「癒し」である。つまり若い社員の悩み事の相談に乗ったり、女上司の運転手をつとめたり、彼女の子どもの面倒をみたり、といったことになるのだが、ベンはそれで満足できるのだろうか?

夢をみせてくれる映画として評価したい

マイ・インターン」は結局のところ、主演のふたりの個性と演技力でもっているような映画だと思う。脚本はあまり練られていないせいかツッコミどころ満載で、そのへんがこの映画の評価がわかれている原因ではないだろうか?

しかし世代間の価値観のギャップを埋め、「たまにはお年寄りのいうことも聞こうよ」というメッセージを発しているところ、三流映画の烙印を押してしまうのはもったいない。せめて観る側としては、「仕事も家庭も大事にしたい」「トシをとっても一目を置かれるシニアになりたい」と願うなか、映画が見せてくれる夢を、夢として楽しむにはいいのではないだろうか?