私がチャーリー・パーカーを知ったきっかけ
モダン・ジャズの父であり、伝説的なアルト・サックス奏者のチャーリー・パーカーの名を私が初めて耳にしたのは、20歳のとき意を決して、好きで聴いていたジャズピアノを習おうと思い、ヤマハのジャズピアノ教室の門を叩いた時のことである。
先生は「まずブルースから始めましょう」と言って、チャーリー・パーカーの「Now's time」を練習曲として指定されたのだった。私はそれまで主にピアノトリオばかりを聴いていたし、その後も管楽器のジャズを好んで聴いたわけではないので、チャーリー・パーカーに特に思い入れがあるわけではない。だから村上春樹氏の短編集「一人称単数」のなかの「チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ」にあるように、もし村上春樹氏が「チャーリー・パーカーがボサノヴァを吹いた幻の録音が見つかった」とフェイクニュースを書いたとしても、何の疑問ももたずに信じていっぱい食わせられただろう。だってチャーリー・パーカーの没年は1955年で、ボサノヴァのアメリカでの流行は1962年だ。2023年の現代から見れば大して変わらん。
夢の中でチャーリー・パーカーが吹いてくれた「コルコヴァド」
もし本当に村上春樹氏が過去、そのようなフェイクニュースの記事を書いて、抗議の手紙が何通か来ただけなのなら、当時はまだのんびりしていたのだろう。今だったら炎上しそうな気がするけど。
そしてその事件の数年後、村上春樹氏の夢にチャーリー・パーカーがでてきて彼に語りかけ、なおかつソロで「コルコヴァド」を吹いてくれる。ウン、これはいい。少なくとも夢に猿や羊がでてくるより、死んでしまった人のほうが、私にはずっとリアル感がある。
これを機会にアルトサックスのソロの「コルコヴァド」を探したがみつからなかった。代わりに、といっては何だが、下にスタン・ゲッツのを貼っておいた。こちらもなかないいと思うのだが。
ベートヴェンのピアノ協奏曲一番、三楽章でスイングする
村上春樹氏は夢の中にあらわれたチャーリー・パーカーにこう言わしめている。「ひとつのメロディーがどうしても頭を去らなかった・・・(中略)そのメロディーはなんとベートヴェンのピアノ協奏曲1番、3楽章の一節だった」「ベートーヴェンの書いたメロディーの中では、こいつは最高にスイングする一節だ」
私はそのメロディーに心当たりがなかったので、YouTubeで検索してみた。結果、以下のようなタンタラタッタが猛スピードで繰り返されるこれじゃないかと思うのだがどうだろうか?
「スイングする」とはどういう意味なのか?
さて「スイングする」とはどういう意味なんだろう? 私にはとても説明できない。もし説明を求められたら、「あのーそのー、要するに、それを聴いただけでカラダが踊りだしたくなるような、つまり、ノリがいいってことですよねぇ」ぐらいしか言えない。
それではスイングするメロディーとは?まずテンポはアンダンテ以上に早いような気がするが、ミディアムスローでもOKな気もする。やぁーむずかしいな。定義を知りたい方は村上春樹氏の「意味がなければスイングはない」を読んでください。私はこの文庫本を持っているけれど、スイングについて書かれた文章があるかどうか、あまり自信がない。
ところでもし、誰かが私にスイングできるクラシック曲は?と聞いてくれたら、迷わずベートーヴェンの「ロンド・ア・カプリッチョ」別名「失われた小銭への怒り」Op.129を選ぶと思う。これもいつかテクニックが身についたら(いつかっていつなんだ?)ぜひ弾いてみたい曲のひとつである。あれ、でもこれもチャーリー・パーカーと同じくベートーヴェンなんだね!