夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

日本初のピアニスト久野久は本当はどういう弾き方だったのか?

日本初の純国産ピアニスト、久野久(「ピアニストという蛮族がいる」より)

日本初の純国産ピアニスト久野久の生涯

きのうに引き続き、中村紘子さんの「ピアニストという蛮族がいる」について気になることだが、きょうは日本初のピアニスト、久野久についでである。

久野久の生涯については、かつてバラエティー番組でも取り上げられ、その内容がYouTubeにもアップされていた(今はないようだ)ので、ご存じのかたも多いのではないかと思う。

ご存じないかたのためにかいつまんでいうと、久野久1886年に出生。

15歳になってからはじめて本格的にピアノを習い始め、猛練習の甲斐あって東京音楽学校の教授にまで昇りつめ、リサイタルでも大成功。

「日本文化を世界に知らしめる」という明治政府の肝いりで渡欧したが、現地での音楽レベルに圧倒され、将来を悲観し、38歳で帰国することなく自ら命を絶っている。

中村紘子さんの久野久伝に誤謬あり、について

問題は(問題というほどのことでもないが)、中村紘子さんの久野久伝には誤謬が多い、と出版後にある人たちから言われているらしい。

私がちょっと調べたところ、中村紘子さんによると久野久の実家が貧しかったと書いているが、実際はかなり裕福だった、とかそういうことらしい。

あと、久野久のことを「文明開化の犠牲者だった」のように書くのはいかがなものか、とか・・・それは物事の捉え方の相違で誤謬とは言えんでしょ、と思ったりするのだが?

それにピアノを弾く人からすると、そういったことは二義的なことであろう。

私をも含め、ピアノを弾く「蛮族」にとって気になるのは、久野久は本当はどういう奏法で、どういう練習をしていたのだろう?ではないだろうか。

例えば

  • レコードもそれほど普及していなかった時代(と思うのだが)、楽譜を読んだだけで曲想を得ていたのか?
  • 「指先から血がでて鍵盤が赤く染まるほどだった」そうだが、どういう弾き方をしたらそうなるのか?そうなる前に腱鞘炎になるとか、肩や腕が故障しなかったのか?
  • 寝る間も惜しんでピアノをさらっていたそうだが、いったい一日何時間ぐらい弾いていたのか?

なのだが。

久野久の奏法の真相が知りたい

中村紘子さんは、「一体どうやったら指先が破れて血がほとばりし出るような奏法になるのか、理解に苦しむ」と書いておられるが、ピアノ学習者の私も同意見である。

そこで勝手に想像するのだが、これは一種のフェイクニュースではなかったのか?

例えば、久野久が熱演のあまり、髪が崩れ、かんざしは飛び、着物の裾を乱れるのを観客席で見た人が、「ああなるからには、さぞかし指は血に染まっただろう」と想像し、誇張して書いたとか?

あるいは当時は今のようなハンドクリームがなく、ワセリンも入手が難しく、あかぎれやしもやけに悩まされていたとか?

ありえないとも思うが、当時のピアノは鍵盤の表面ががささくれだっていたとか?

以上、どうしようもない想像だが、それほど「指から血が出る」は信じがたいのだ!

久野久の「月光ソナタ」を聴いて

唯一録音が残されているという久野久の「月光ソナタ」を聴いて見て・・・

録音状態がきわめてよろしくないため確かなことは言えないのだが、レガートに弾くことはあまりなさらなかったように思う(第1楽章)

3連符の長さが揃っていないところがある(第1楽章)

総じて第3楽章の出来のほうが第1・2より良さそうな。

第3楽章では10:30あたりのミスタッチはちょっと痛いものの、情熱的にアップテンポで弾くのが彼女の真骨頂だったのかな?

たぶんベートーヴェンに心底、心酔していたんだろうね。

天国で連弾して楽しんでおられますように。合掌。

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