先生は春秋社のファンだった!
先日、私がバッハ/パルティータ1番の楽譜として、全音ピアノピースを買ったところ、先生から完全なダメ出しがきた、というハナシの記事を書いた。
kuromitsu-kinakochan.hatenablog.com
本記事はその続きであるが、もったいぶることもあるまい。
私が
「ではどこの楽譜を買えばいいのですか?」
と問うたところ、先生は、
「春秋社です!」と言ったのである。
これはちょっと意外だった。
なぜかというと、これまでネット記事で春秋社版について好意的なものを読んだ記憶がなかったからだ。
確証はないが、「春秋社版には誤植がある」と書いてあった記事もあったように思う。
ところが先生は、
「私は長い間、使っていますけれど、誤植なんかありませんでしたよ。
そんなことをいわれているのなら、私、頑張ってくださいって春秋社に書こうかしら」
とまで言われたのだから、筋金入りの春秋社ファンにちがいない。
メルカリで春秋社版を700円で購入
そこまで先生が言われるのなら、「師のたまわく」の意を受けて、私もパルティータ1番を春秋社版で買いなおすことに決めた。
そこであらかじめネットで価格を調べたところ、3,190円!
高いなぁ~
それも私が弾きたいパルティータ1番ばかりでなく、いろいろと今後弾きそうもない難し気な曲がはいっている。
私の性格として、弾きもしない、つまり使用しないものに対価を払うのは釈然としない。
これをケチと呼ぶなら呼べ!
そこでメルカリを探したことろ、700円で売りに出されている方がおられたので、さっそくそれをポチり、少し色あせた楽譜がわが家の本棚に並ぶことになった。
かつての鍵盤の天皇への反抗心かもしれない
それにしてもどうして春秋社版の楽譜の評判が、すばらしいとはいいがたいのか?
試しに、「春秋社 楽譜 評判」で検索してみたら、まさに「買ってはいけない」風の記事が目白押しである。
でももう少し正確に言うと、なにもその方たちは春秋社という会社に異論があるのではなく、批判の矛先は編者の井口基成氏に向けられているようでもある。
井口基成氏とは、戦前~戦後にかけて日本のピアノ界で大きな影響力をふるったピアニスト、教育者である。
ピアニストとしての芸風は、今では悪名高いハイフィンガー奏法で、やたら音が大きく、あまりにも激しく鍵盤を叩くため、弦がしばしば切れた、という「ホンマかいな?」というエピソードもあるかたである。
数多くのピアニストを育て、「鍵盤の天皇」とまで呼ばれたそうだが、今やハイフィンガー奏法はすっかり影をひそめ、脱力やらロシアンピアニズムやら重力奏法やらが脚光を浴びる時世となり、井口基成氏イコール古い音楽家と考えられているのではないか?
だから坊主憎けりゃ袈裟まで憎し、でもないだろうが、ハイフィンガー奏法➡井口氏➡春秋社版という順で、批判の矛先が向けられているのではないか、というのが今のところの私の仮説である。
春秋社版の新版バッハ集が刊行
と思ったところで、ついつい価格しか見ていなかった私の失敗なのだが、春秋社版のバッハ集は2022年に新版が刊行されたらしい。
やはり時代にあわないテクスト、あるいは楽曲解説があり、それらを改良したということなのか?
だったら無理をしてでも新版を買ったほうがよかったのかも?
と今回も「後悔先に立たず」とほぞをかむ私なのだった。