なぜ、今ごろ「嵐を呼ぶ男なのか」
NHK BSで放送していた「嵐を呼ぶ男」を観る気になったのは、かねてより、これまであまり魅かれることのなかった、石原裕次郎さんの魅力がわかるかな?と思ったからだ。
石原裕次郎さんが、政治家、石原慎太郎氏の実弟で、大スターだったことはもちろん知っていた。しかし、65歳の私でさえ、その黄金時代は知らない。
1970-80年代の人気テレビドラマの「太陽にほえろ!」で「ボス」役で出演されていた折も主役というより、若い刑事たちのまとめ役といったかんじだった。
だから、私の母の世代が、「ゆうちゃんカッコいい。足長いし」と言っているのを聞いて、「???」だったのだ。
1950-60年代はジャズの黄金期
石原裕次郎さんの代表作、「嵐を呼ぶ男」は1957年の製作である。私が1歳のときだから、映画で映し出される光景は、記憶の奥底にあった風景そのままで、まるで昭和ドキュメンタリーを見ているようだった。
- 何かにつけて、タバコを吸っている男女
- ステージ上の歌手に紙テープを投げる観客
- 食パンが飛び出てくる型式のトースター
- 路地でチャンバラごっこをする子どもたち
- 薄汚い暗い木造アパート
しかし、私を興奮させたものが一つあり、それは当時はジャズの黄金期だった、ということだ!
銀座のクラブには必ず、びしっと揃いのスーツで決めたビッグバンドのメンバーがいて、入れ替わり立ち替わり、管楽器奏者がソロをとる。
雑誌の人気投票の部門も、「野球」「相撲」「歌謡」「ジャズ」と別れていて、「ジャズ」は見事に大衆文化の一角を担っていたのだ。ああ、タイムマシーンがあったら昭和32年へ行ってみたい!
天才ドラマー、白木秀雄さん
石原裕次郎さんは映画の中でドラムを叩いているが、これは実際は、当時の天才ドラマー、白木秀雄さんの演奏ということだ。
白木秀雄さんについては、私は名前しか知らなかった。しかし、当時はずいぶんメディアを騒がせたらしい。外国人ジャズドラマーに劣らない才能に恵まれ、1961年にはアート・ブレイキーとのドラム合戦で話題となる。人気女優との結婚と離婚。
バンドのメンバーとのいざこざも絶えなかったらしく、次第に人気が落ち、精神安定剤の過剰摂取で亡くなったそうだ。よくある、破滅型のミュージシャンだったのかもしれない。
石原裕次郎さんの魅力
さて、かんじんの石原裕次郎さんだが・・・うん、アクションシーン、なかなか迫力があった。歌も上手というのではないけれど、味があったし。
ただちょっと歯並びがね。後年、矯正されたのかもしれないが、映画当時の歯並びはちょっと・・・ファンに叱られそうなので、これ以上は言わない。