夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

心揺さぶられるマヘリア・ジャクソンのゴスペル

 

期待せずに見た「悲しみは空の彼方に

ウチでは、NHK BSで放送している洋画を録画しておいて、週1本の割合でみるのだが、夫と私の好みが違うせいで選択が難しいこともある。

私はバイオレンス、アクション、SFが嫌いだし、どうやら夫はラブコメが苦手なようだ。

先日、「恋におちたシェイクスピア」をいっしょに観たのだが、彼はもう、それこそけちょんけちょんにけなしていた。そんなに悪くなかったと思うけど?

そんなわけで、1959年のアメリカ映画、「悲しみは空の彼方に」(Imitation of life) については、夫からダメだしがくるか私が居眠りするか、と思ったのだが意外や意外、つっこみどころはあるにしろ、心に残る映画だったのだ。

 

あらすじをざっくりいうと、

舞台女優を志望する白人のローラと、行き場のない黒人のアニーがお互いシングルマザーということで意気投合し、生活を共にすることになる。

野心的なローラは娘の世話をアニーにまかせ、スティーブという誠実な青年の求婚を蹴ってまで、女優として成功の階段を登ろうとする。

一方、黒人のアニーはローラの家政婦として勤勉に働きながらも、肌が白く生まれた娘から疎まれ、心の救いを教会に求めるのだが・・・

 

アニーとローラの関係は本当はどうなんだろう?

アニーとローラはいつも信頼しあっているように見えるのだが、ローラがアニーに、

「あなたはいつも家にいるから、そんなに友人が教会にいるなんて知らな かったわ」というと、アニーは、

「だってあなたはたずねたことはないでしょう? 私に友人がいるかなんて」と応酬する場面があり、私は「あ、痛!」と思った。

そう、たずねないことは無関心の第一歩かもしれないのだ。

 

アニーの葬式へのこだわり

アニーの希望と救いは、自分の葬式が盛大に行われることだった。

死んでしまったら、自分の葬式がどんなのかわからないじゃないか、と嗤うひともいるかもしれないが、この映画をみていると、私はアニーを馬鹿にする気にはなれなかった。

アニーはひたすら、自分の棺が白い馬の曳く馬車に乗せられ、神のもとに導かれることを夢見ている。そしてそれが娘にもう会わないでほしい、と言われても生きるための支えとなっているのだから。

 

アニーの葬列はみごとだった

さて、アニーは長年の疲れが溜まっていたのか、あるいはずっと病に侵されていたのか、ついに帰らぬ人となり、その葬式は壮大、荘厳なものとなる。葬式の会場で歌われるのが、マヘリア・ジャクソンの「Trouble of the World」である。これを聴いて心が揺さぶられないひとっているのかしら?

そして花で覆われたアニーの棺が馬車に乗せられる寸前、アニーの娘、サラ・ジェーンが現れ、「ママ、許して! ママをずっと愛しているわ!」と叫ぶ。

そして、生前アニーが夢見ていたように、その棺は白い馬の馬車に曳かれ、沿道にいた群衆はみな帽子をとってアニーの亡骸に敬意を表するのだった。

 

心揺さぶられるマヘリア・ジャクソンのゴスペル

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