短編「偶然の旅人」で言及されているフランシス・プーランク
2日続けて村上春樹の短編「東京奇譚集」に言及したが、きょうはその最終編(たぶん)。
きょうは「東京奇譚集」に収められている最初の短編「偶然の旅人」について。
「ハナレイ・ベイ」を再読するついでに、こちらも再読してしまったのだが、最初に読んだときにまるですっ飛ばした、というか印象に残らなかった箇所があることに気がついた。
それは主人公のピアノ調律師が、いちばん愛好しているのはフランシス・プーランクの曲で、なおかつプーランクはゲイだった、ということである。
ゲイだったと言われても、いまさらまったく驚かないよ。だってチャイコフスキーだってたしか、そうだったよね?
ただ、プーランクが生きた20世紀の前半において、ゲイであることを隠そうとしなかったことはなかなかできないことだっただろう、とある。
そして語り手である「僕」は、ピアノ調律師(彼もゲイ)の友人に、プーランクの小品をときおり演奏してもらうことがあるのだが、「フランス組曲」とか「パストラル」という曲名が挙げられている。
そこで試しに、両方ともYouTubeにアップされている演奏を聴いて見たのだが、とても心惹かれたとは言い難かった。
そこで「プーランクってねぇ~~」とタメ息をついたところ、突如昨年、プーランクの即興曲集の15番目にあたる「エディット・ピアフを讃えて」をレッスンでとりあげ、どうにかこうにか合格したことを思い出した。
なんとそれまで、私はこのことをすっかり忘れ、プーランクってやったことない、と思い込んでいたのだ!
プーランクの「エディット・ピアフを讃えて」は人気曲だ
たしかにレッスンで「エディット・ピアフを讃えて」をとりあげたとき、この曲をやりたいと言い出したのは、先生ではなくこの私自身なのだ。
やっているときは、確かに美しい曲だと惚れ込んだのに、時間が経った今となっては、その感動が薄れている。
どうも私はバッハとドビュッシー以外はこういうのが多い。
そして題名からして「エディット・ピアフを讃えて」とあるから、私は勝手にプーランクにとってはピアフはミューズというか、心の恋人なんだ、と思い込んでいた、
でもゲイだったのなら、そうじゃないよね。
彼は純粋に女性としてのピアフにではなく、ピアフの「芸」に心酔したのだろうと想像できる。
この「エディット・ピアフを讃えて」はよほど人気があるらしく、発表会でも何回か耳にした。とても一般受けしそうな甘く切ない曲想だものね。
「Les chemins de l'amour(愛の小径)」が現在のお気に入り
まわりまわってプーランクをいろいろ聴いているうちに、偶然お気に入りを見つけた!
「Les chemins de l'amour(愛の小径)」という、もともとは歌曲にピアノ伴奏がつけられたもので、現在ではさまざまな楽器で演奏されているらしい。
どうしてこの曲が気に入ったかというと、レトロな昔のパリを思わせる雰囲気だから。
曲想としては「エディット・ピアフを讃えて」に通じるものがあると感じた。
YouTubeで調べてみるとソプラノ+ピアノ伴奏が多いのだが、私は下に貼った動画が気に入った。
なぜかというと、アップライトピアノなのにとてもいい音がでていて、しかもピアノの上に楽譜とかが積んであって、「グランドピアノでさぁ弾きますよ!」というより、リラックスしていて自然体なのが気に入ったのだ。
ああ、こんな風に弾けるといいなぁ。
輸入楽譜しかなく高いが本当にやるのか?
さて、問題は楽譜だ。
無料楽譜があるかどうかまだ調べていないのだが、本腰を入れてやるとしたら、やはりちゃんとした楽譜をコレクションしたい。
しかしどうやら輸入楽譜しか手に入らず、1曲だけで2500円以上はしそうなのだ。
高いなぁ~ メルカリもみたんだけれど・・・
しかし本当にやるのか? またピアノの脇の本棚に積むだけにならないのか?
深く自分の心に問うことにする。