バッハの持続音のむずかしさ
バッハを弾かれるかたはよくご存じだと思うが、例えばある指でずっとある音を押さえているあいだに、他の指で他の声部を弾くことがよくある。
このずっと押さえる音はどういうのか?
「持続音」でいいのか?
私の先生はそう呼んでいらっしゃるが、私がわかりやすいように簡略化されているのかもしれず、別に専門用語があるのかもしれない。
下の例でいうと、1小節目の2分音符、2小節目の右手4分音符は赤の矢印でつけたところまで押さえなければならない、ということである。
調べても今のところ、正式な用語がわからないので「持続音」で通させていただくが、この「持続音」を、バッハの独学時代はきわめていいかげんに弾いていることが多かった。
「ピアノってすぐに音が減衰してしまうから、一生懸命押さえていてもしんどいだけで、そんなん聞いている人にはわからへんやん」
というまことに私らしいいいかげんな推量である。
ところが前の先生のときに、これは徹底的にやり直しさせられた。
「バッハの文法に反する」
というのだ。
おー、バッハと文法か!!
オルガンではごまかせない持続音
もうこれは前の先生に鍛えられて大丈夫だと思っていたが、やはり詰めが甘いところがあるらしい。
「ハモンドオルガンで弾いてみましょう」
ということになり、こんどは伝説の(?)B-3を弾かせていただくことになった。
どうだろう!この響き!! ワォ~~
しかしここで大事なのは、オルガンでこの持続音をいいかげんにしておくと、音の長さが足りないのが一発でわかってしまうことだ。
ここでもまた、ピアノではごまかしがきく持続音が、オルガンではまったく通用しないことがよくわかったのだ。
ハモンドオルガンの田代ユリさん
家へ帰ってからふと気がついたのだが、
「これは別にハモンドオルガンでなくても、電子オルガンでもわかるよね」
ということだった。
確かにハモンドオルガンはエレクトーンのピーク時代でも、他の電子オルガンの追随を許さない名声を誇っていた。
その昔、ナショナル電子オルガンの講師として小学生を教えていた私は、ハモンドオルガン奏者の田代ユリさんに憧れ、楽譜もずいぶん持っていたし、セミナーにも通った。
ハモンドオルガンとピアノも弾く田代ユリさんは、当時、今でいうハラミちゃんみたいに人気があった。
美人でクールな雰囲気がカッコよかったなぁ。
バッハをハモンドオルガンや電子オルガンで弾くのは邪道?
今になってとても不思議に思うのだが、現代ではバッハをピアノで弾く愛好者がとても多いのに、当時、ハモンドオルガンも含めて、エレクトーンや電子オルガンで、バッハを弾こう、という空気はまるでなかったことだ。
きょうも「ハモンドオルガン バッハ」「hammond organ bach」などでいろいろ検索をかけてみたが、プロらしき方の演奏はヒットしなかった。
ひょっとしてバッハをハモンドオルガンや電子オルガンで弾くのは邪道なのか?
ハモンドオルガン抜きでは語れない名曲
1990年代までは日本の球場でもエレクトーンが弾かれることが多かったが、今は西武球場ぐらいしかないみたい。
しかし、アメリカのメジャーでは今でもハモンドオルガンの生演奏が活躍しているそうだ。
ハモンドオルガンがんばれ!
そして、ハモンドオルガンなしには考えられないヒットは、というとロックではこれ!
プロコルハルムの「青い影」(A Whiter Shade of Pale)(1967)
そしてジャズではもちろんジミー・スミス(1925-2005)。
彼の代表作「The Cat」(1964)を聴いて見よう!