1988年の若者が熱狂した映画「グラン・ブルー」
1988年の仏伊合作映画「グラン・ブルー」は公開当時、多くの若者から熱狂的な支持を受けたカルト的な映画だそうだ。
そして日本でも大ヒットを記録したらしいが、公開当時、若者のひとりだった私はなぜか見ていない。
きっとこの映画のふれこみが「海洋ロマン」だったせいだろう。
私は海を眺めたり、浜辺を散歩したりするのは大好きだが、水族館など海の底にはほとんど興味がなくて、そういうのを見せられても退屈してしまう。
だから美しい海底の映像、イルカの群れの映像、と言われても半ば「??」なのだが、こういうのを撮影するのは30年以上前の技術だと、とても大変だったのかもしれない。
やはりリュック・ベッソンはすばらしい監督なのだ。
映像の美しさもさることながら、ストーリーの起承転結がはっきりしている、数少ないフランス映画を撮る監督ではないだろうか?
「グラン・ブルー」のオトコたちは女性よりも海がお好き
映画「グラン・ブルー」では実在の天才フランス人ダイバー、ジャック・マイヨールとイタリア人ダイバーエンゾの、フリーダイビングをめぐるライバルの歴史と友情が主軸になっている。
女性も登場するが、主役はいつも海のオトコたち。
内気で無口無欲なジャックに恋をするアメリカ人女性のジョアンナは、将来彼と暮らす家や犬を飼うことを夢見たりしているが、観ている私たちは「それ、無理そう。こういう男の人との生活はあんまりオススメできないけど・・・」と思わざるを得ない。
だってジャックには、人魚が住む海の世界や、いつも彼の姿をみると歓声をあげるイルカたちとつきあっているほうが、ずっとしっくりくるのだ。
一方、陽気で自信に溢れたエンゾだって、美女とつかのまの情事を楽しむものの、優先順位の上位にくるのはダイビングとママ。
ママには決してアタマが上がらず、パスタはママのしか食べない、というマンガに出てくるような典型的イタリア人男性なのだ。
ジャン・レノはピアノが弾けるのか?
エンゾはピアノを趣味としているらしく、浜辺でブルージーなメロディーを弾いているのが下の動画。
これが好評らしく、「何の曲でしょうか?」と質問しているかたもいらっしゃる。
私にしたら、「曲」というよりも即興で思いつくままのメロディーと和音を奏でているように思うのだがどうだろうか?
演じたジャン・レノはこの役以降、大スターの階段を駆け上がるが、ピアノはどれくらい弾けるのだろうか?
いろいろ調べたが、今のところ情報はみつからないのが残念。
映画と現実の大きな違い
映画「グラン・ブルー」では、ライバルのエンゾが追いつくことのできない記録をジャック・マイヨールが樹立し、エンゾはこれに挑むため、無理な潜水で命を落とすことになっている。
ところが、実在の人物がモデルになっているにもかわらず、本当のジャック・マイヨールとエンゾはずいぶんと映画とは異なる人生を送ったことがわかった。
本物のジャック・マイヨールはダイビングの第一線から引退したあと、心の病により2001年に自殺している。
一方、エンゾは映画のエンゾ像が気に入らないと、リュック・ベッソンを名誉棄損で訴えた後、政界にも進出し、2016年に86歳で死去している。
こうも筋書きが違うと、映画は映画、現実は現実とわりきってみたほうがよさそうだ。
だから映画のなかのダイビング勝負にハラハラしすぎるのは無駄というもの。
それよりも、画面に拡がる青の世界を楽しむことこそ、この映画の醍醐味ではないかと思うのだ。