スタンダード曲「Star Eyes」のむずかしさ
現在、ジャズピアノレッスンでやっている曲、「Star Eyes」はジャズファンなら誰もが知っているスタンダードナンバーだが、実にいろいろなひとが、楽器やヴォーカルで、さまざまなスタイルの演奏をレコーディングしている。
いつもならスタイルの選択は私、つまり生徒の判断によって、ミディアムなりスローなり、イントロはルバートで、とか勝手に練習してくるのだが、この曲に限り、先生からあらかじめ指定があった。
「Star Eyes」のコード譜
ご興味のあるかたはぜひ、下の「Star Eyes」のコード譜を参照されたい。
ラテン=8ビートのところは黄色のマーカー、スィング=4ビートのところはマーカーをひいてみた。
つまり、イントロ8小節とアタマの16小節は8ビート、サビの8小節は4ビート、そしてまた8ビートに戻って8小節。
最後の4小節は4ビートでテーマの1コーラスが終わる。
2コーラス目以降は全小節4ビートで、という注文もつけられた。
お手本となるのは、下のバリー・ハリスのピアノだろう。
先生はアメリカ時代、バリー・ハリスのマスタークラスを受講されたそうだから、それがアタマにあったのかなぁと私は想像しているのだが。
標準語と関西弁は交互に喋れない
でも私にはこれ、すごくやりにくい。
ラテン=8ビートのところは、マラカスをチャカチャカ振り回している、ロス・インディオスなんかをイメージし、スィング=4ビートのときはニューヨークのジャズクラブの、ウィスキーと氷の映像を自分のアタマに映し出したが、やっぱりどこかでボロがでる。
下手をすると、8ビートのところで4ビートに、そして4ビートのところで8ビートになってしまったりする。
これって標準語と関西弁を交互に喋れ、と言われているようなものだ。
私は話者が標準語の場合、関西弁を話すことができない。
逆もそうで、コテコテの関西弁の友人の前では、標準語がでてこない。
ようするに他者のリズムに影響されやすい人間なのだ。
4ビートはタバスコで
素直に、
「先生、これ、私できません」
と泣きをいれると、いつもは
「できへんなんてゆうたらいかん!」
と言われるのがオチなのだが、今回は
「4ビートのとこはな、タバスコゆうたらいいねん」
と言った。
そしてピアノで4ビートのアドリブを弾きながら、クチは
「タバスコ タバスコ タバスコ タバスコ」
と繰り返すので、もう私はケラケラ笑ってしまった!
いや、正確に言うと、
「タバスコ」ではなく、
「タッバスコ」に近いと思う。
タッはいわゆる「アナクルーシス」で次の音への準備。
そしてバにアクセントをつける。
次のスコはもう、脱力して指先だけでチャラッとひく感じ。
この要領を覚えてしまえば、本当に便利だ。
バッハでは「ねえねえ」
ではクラシックではどうか。
まさか「タバスコ」で弾くわけにはいかない。
しかし、クラシックピアノの先生は、バッハの8分音符のところを、よく
「『ねえねえねえ』で弾いてみて!」
と言う。
これにも要領があって、「え」に若干のアクセントを入れると、8分音符の裏拍まで感じることができ、スタカートではないノンレガートが表現できる、ということなのだろう。
いや、なにごとも工夫とコツである。
私も学生時代にこれに気がついていたら、もっと成績があがったかもしれない?