クロワッサンはパンではない
先日の10月第2回目のフランス語の個人レッスンの折、ムッシュー先生は、
「さあ、いつものように今月にあったことを話してください」
と言った。
いつものように?
そんなの決まっていたっけ?
今月にあったこと?
私の日常はきわめて monotone (モノトン=単調:フランス語初級のとき「星の王子様」で出会ってから忘れていない単語)で、毎日がピアノの練習、映画鑑賞、読書の繰り返しである。
そんなことを先生に言ってもしようがないので、数日前のブログ記事にも書いた通り、「健康診断の帰りにパン屋に寄ったが、そのときはパンにうるさい夫の好みを忘れており、なぜかというと夫にとってパンとは「バゲット、パリジャン、クロワッサンで・・・」
と言ったところ、先生からダメ出しがでた。
「クロワッサンはパンじゃないよ!
Viennoiserie (ヴィエノワズリ)でしょ!」
ああ、そうでしたね。
忘れていたわけではないんですけど、これ、発音しにくいし、日本人にはクロワッサンはパンなんだから、大目にみてくださいな。
kuromitsu-kinakochan.hatenablog.com
手元にある電子辞書でViennoiserieをひくと、「菓子パン」とでてくる。
でも私が「菓子パン」というといかにも60代っぽいので、ここは「デニッシュ」と呼びたいわ。
でもデニッシュの語源はデンマークだよね?
反して Viennoiserie の語源は Vienne(ウィーン)なのだ。
もうまぎらわしいわ。
ムッシュー先生もパンの保守主義者
来日して間もないころ、先生はまだ日本語があまり読めず、パン屋さんにあったクロワッサンを喜び勇んで買って朝食に食べようとしたところ、吐き出しそうになったという。
それはカレー入りクロワッサンだったのだ?
ようするにカレーパンということ?
カレー入りクロワッサンは食べたことないけれど、私なら充分に食べられると思うよ。
「ああ、ああいうのはイヤだな。許せない。
僕はあなたのご主人とまったく同意見だよ」
あんれまあ、ムッシュー先生もまた私の夫ちゃんと同じで、パンの保守主義者ということがわかったのだった。
フランス人がおいしいと思う日本のパン屋
それではフランス人がおいしいと思う日本のパン屋さんは存在しないのか?
そんなことはないと思う。
私が最初にフランス語を習ったマダム先生は「カスカード」のパンがおいしい、と言っていた。
私と母はここのカスクート(小型のバゲットにハムを挟んだもの)がお気に入りでよく買ったものだが、フランスへ行ってから、かの地ではこれはサンドウィッチと呼ぶことがわかった。
しいて訳すならカスクルート(casse-croûte)にしてほしかったわ。
また東京で知り合ったあるフランス人はポンパドウルがおいしいと言っていた。
こちらは全国展開しているようだから、ご存じのかたも多いのではないか。
「ビゴの店」にまつわる評価
しかし阪神間で圧倒的な知名度を誇るパン屋さんは、やはり「ビゴの店」ではないだろうか。
創立者のビゴ氏は1972年に芦屋で1号店を開店してから東京にも進出し、2003年には
レジオンドヌール勲章も受章されているのだ。
もちろんこの名声についてはムッシュー先生も敬意を表し、しかし
「2代目になってからはちょっとね・・・」
と言葉を濁される。
そして私の夫ちゃんは、というと、
「その日の正午までに買ったバゲットは悪くない」
しかし
「ホームページに記載されているフランス語の綴り字間違いが許せない」
らしいのだ。
調べたり気をつけたりすれば避けられる間違いなのに、なんで間違うのかって。
そうですかい。
フランス人の国民性とは、ことのほか旺盛な批判精神、という私の見解はいまだ揺るいでいない。