左側がブルース・リウさん
ブルース・リウさんはフランコフォン
2021年のショパンコンクールで見事、一位に輝いた中国系カナダ人のブルース・リウさん。
パリ生まれでモントオール育ちというのを聞いて、一度ご自身が話されるフランス語を聞いてみたい、と思っていた。
フランス人はひとによるのかもしれないが、一般的に、フランス国外で話されるフランス語のアクセントについて手厳しい。
嘲笑している、といっても言い過ぎではないと思うほどだ。
アフリカ、カナダのフランス語はもちろん、ベルギー、スイスのひとのフランス語も何かといえば、嗤いの対象となる。
私は以前、フランスのテレビで、セリーヌ・ディオンのインタビュアーが、
「あなたは会話では訛っているのに、歌では訛りませんよね」
と言っているのを聞いて、心底ビックリ、そんな言い方はいくらなんでも失礼でしょう!と思ったのを覚えている。
セリーヌ・ディオンはみなさんご存じかと思うが、フランス語を話す人が多いケベックの出身だ。
だから、私はブルース・リウさんのフランス語もセリーヌ・ディオンと似ているのか、いささか心配だったのだ。
なお、私の耳はケベック人特有のアクセントが判別できない。
今までに話す機会があったケベック人で、 international をフランス語のアンテンヌナショナルではなく、英語風にインターナショナルと発音する人がいたが、それも訛りではなく、その人のクセかと思っていた。
ブルース・リウさんのフランス語が聞ける動画
探し出した動画では、CGTNという中国系フランス人を対象としたサイトで、ブルース・リウさんがインタビューを受けている。
このとき、ブルースさんは22歳(現在はたぶん25歳)。
動画にはフランス語字幕がついているが、機械によるものなのか、間違いが多すぎるので、フランス語レッスンの際にムッシュー先生に不明なところを確認した。
ブルース・リウさんのピアノ歴
ブルース・リウさんは1997年、パリで生まれた。
ご両親はどちらも北京出身とのこと。
6歳のとき、ご家庭の都合と、より柔軟な環境を求めてモントリオールに移住。
ピアノを始めたのは8歳のとき、それも55鍵しかない電子ピアノで、一日の練習時間は10~15分ほどだったという。
最初からアコースティックピアノでなかったのは、息子が本気でピアノに取り組む気があるのかどうかわからないので、というご両親の意向だったらしい。
だんだん本気を出してきた息子のために、ご両親は2年後にアップライトピアノ、その2年後にグランドピアノを購入。
ブルースさんが真剣にピアノに取り組むようになったのは、13,14歳になってからで、それもコンクールが刺激になったからだと言う。
ブルース・リウさんのハートは中国人?
少々がっかりしたのはインタビューでは、それほどブルースさんのピアノについて質問がなされていない。
サイトが中国系の視聴者を対象としているせいか、インタビュアーがやたらブルースさんの、中国人としてのアイデンティティーを強調しているように思えた。
ブルースさんも、テレビ番組で覚えた自分の中国語は、1番組につき、10回は観たせいか高いレベルに達したし(書けなくても)、中国との絆をもち続けていると言っていた。
ブルース・リウさんのフランス語は?
さて、生粋のフランス人からみたら、ブルースさんのフランス語はどうなのだろう?
ムッシュー先生いわく、
「ケベックの訛はそれほどない。でもフランス語が母国語でないのはすぐわかる」
とのこと。
(ブルースさんは初等、中等教育もフランス語で受けたはずだが、英語のほうがお得意なのだろうか?)
一方、インタビュアーの女性のフランス語については、厳しかった。
彼女が文法の間違いをするたびに訂正していたし、彼女がMontréal を、フランス語のモレアルでなく、英語みたいにモントリオールと発音するたびに怒ってるんだから!
先生、一口にフランコフォンといってもいろいろなひとがいるのですね。