夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

音楽とフランス語学習の視点でみる映画「おくりびと」

2008年の日本映画「おくりびと

映画「おくりびと」がやっと観られるようになった

2008年の映画「おくりびと」はアカデミー外国語映画賞日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した名作の誉高い映画である。

なのにこれまでこの映画を観たことがなかったのは、肉親を見送る最前線にいたときには、あまりに現実すぎて、みる気になれなかったためだろう。

しかし最後に父を見送ってからはや数年、「お母さんのときは?」「お父さんのときは?」と思い出しながら見る映画として存分に楽しめた。

この映画は実によくできた素晴らしい映画だと思うが、テーマとしてたびたび取り上げられている「生と死」「納棺師という職業」についてはいろいろなサイトが取り上げているので、いまさら私が書くこともないなぁ。

音楽の夢を諦めたチェリストが主人公

私が興味をもったのはまず、主人公の大悟さん(本木雅弘)が、音楽の夢を諦めたチェリストという想定だった。

彼は1000万円以上するチェロを妻に内緒で購入し、東京の管弦楽団にチェロ奏者としての職を得ていたのだが、財政難からこのオーケストラが解散したため、故郷の山形に帰郷することになる。

高額なチェロを売り、もはや職業音楽家として食べていくことは諦め、新聞広告で知った「おくりびと」という職業に身を投じることになるのだが、仕事内容が内容だけに妻に真実を告げることができない。

「この先、僕はどうなっていくんだろう?」

不安に駆られた大悟さんを救ってくれたのは、子ども時代に弾いていた小ぶりのチェロなのだ!

鳥海山をバックに、山形の厳しくも美しい自然を背景に、チェロを弾く大悟さん。

いいなぁ。

私もこのときばかりは、持ち運べる楽器(バイオリン、チェロ、ヴィオラ、フルートなど)を大自然のなかで演奏してみたいとしみじみ思ったのだ。

映画「おくりびと」で出てくるクラシック音楽

映画「おくりびと」の音楽を担当しているのは、作曲家の久石譲氏だが、映画中にはクラシック音楽も出てくる。

  • 大悟さんがオーケストラで演奏しているときはベートーヴェンの第九
  • 「NKエージェント」での3人のクリスマス会でチェロを披露する大悟さんが弾く曲はバッハ/グノーのアヴェ・マリア
  • 妊娠した妻(広末涼子)のために大悟さんが弾く曲は、ブラームス子守歌

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そしてこれはちょっと残念なのだが、妻が大悟さんのお父さんのコレクションであるレコードをかけながら、

「お母さんはお父さんのことがずっと好きだったのね。でないとレコードなんかぜんぶ売ってしまうもの」

という場面がある。

画面では「シューマンのチェロ協奏曲」のLPジャケットが写っているのに、流れてくる音楽は久石譲氏のテーマ曲なのだ。

なんで?

別に久石譲氏の音楽にケチをつける気は毛頭ないが、ここは画像と音楽を一致させてほしかったな。

何より私はシューマンが聞きたいのだ!

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フランス語学習者のためのおまけ

下記のサイトはフランコフォン対象のチェロ愛好家向けだと思うのだが、「おくりびと」の解説と、重要どころのフランス語字幕が読める。

気に入った表現が数か所あったので、下記に書き出してみた。

どうして自分の境遇に似合ったフレーズなら数回繰り返しただけで覚えられるのだろう?

J'aurais dû me rendre compte plus tôt des limites de mon talent.(3:03)

もっと早く自分の才能の限界に気づけばよかったのだ。

 

Comment allais-je m'en sortir?(5:17)

この先(僕は)どうなっていくんだろう?

 

A ces pensées, l'envie de jouer du violoncelle me prit.(5:23)

そう思ったらなぜかチェロが弾きたくなった

 

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