夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

甲子園球場のすぐ近くで受けたアドバイスレッスン

阪神甲子園球場

きょうは「鴎外」先生のアドバイスレッスン日

きょうは楽しみにしていた、ドイツ帰りの輝かしい経歴を誇る「鴎外」先生のアドバイスレッスンをうける日。

ちなみに私にとってのドイツ在住日本人留学生といえば、音楽関係よりも森鴎外しか思い浮かばない。

かといって森鴎外のファンというわけではない。

あんな難しい文語体、読まれへんし。

それにわざわざドイツから会いにやってきた恋人エリスに会いもせず、追い返すなんてひどすぎる明治のエリートやわ。

とにかく甲子園球場を眼前にした、虎風荘跡にある音楽教室での朝10:00からレッスンということで、私はいつになく緊張していた。

10:00 前といえば球場前の人通りもすくなく、閑散としている。

音楽教室が面する甲子園筋では、住民のかたが揃ってゴミをあつめたり花壇の手入れをされていた。

えらいわぁ。

一回しか弾けなかったのにボロボロだった

受付で料金を支払い、時間きっかりにレッスン室(グランドピアノ2台)にはいると、すでに先生が練習されていた。

「よろしくお願いします」

とペコリとアタマを下げ、コートを脱ぎ、つつしんで楽譜のコピーをお渡しし、椅子の高さを修正する間、先生はずっと無言である。

「きょうはいい天気なんですね」なんて絶対に言いそうもない。

緊張したわぁ~

まるでコンクールのときのような緊張度のなか、スカルラッティソナタK466を通しで弾いた。

が、かなりぼろぼろだった。

言い訳をすると、家で弾くとほとんどノーミスなんだけどね。

弾き終えた後、しばらく沈黙があり、先生は

「〇小節目の装飾音は左手にあわせたほうがいい、〇小節目も」

とか言うので、慌てて場所を確認し、鉛筆で書きこむ。

そのあとも沈黙がち。

困ったなぁ、ちょっと口が重い先生なのかもしれない。

インタビュアーになった私

そのあと私は作戦を変えた。

つまりインタビュアーになったつもりで、先生に質問をすることにしたのだ。

あたしゃ黒柳徹子阿川佐和子かい!

でないとちょっと沈黙に堪えられそうもなかったのだ。

私がとっさに考えた質問は以下のようなもの。

  • 装飾音、トリルが苦手なのだが、どういう練習をしたらよいか?
  • トリルは1・3の指がよいか、2・3の指がよいか?
  • ツェルニーなどの練習曲はどういう使い方をしたらよいか?

するとだんだん先生の口がほぐれてきて意外に話しをするようになったのだ!

そして聞いてもいないのに、バッハスカルラッティの装飾音の違いは、ドイツ人の生真面目さとイタリア人の柔軟性の違いだとか、スカルラッティヘンデルは当時の民衆に受ける音楽を書いたのに、バッハは自分のためだけに書いたのが多いとか、ちょっとこれ、講義、座学やん!

できれば私は先生から「もう一回弾いてください」と言ってほしかった。

そしてまずい演奏の挽回をしたかったのだ。

しかし先生にとっては1回聞いただけで、生徒のレベルなんてわかるから、そんな必要はないのだろう。

このあと、私は一切ピアノに触ることもなかった。

あー、もっと弾きたかったわ。

でも収穫がまったくなかったわけではない。

質問をしたおかげで、先生が

「トリルだったらツェルニー40番のこれを弾いたらどうですか?」

とお手本を示してくれ、

私が「あ、それ30番です」

とツッコミを入れる場面もあった。

あと、トリルを弾くコツも実演してくださったし。

でも先生は技術的なことより、音楽の構成とか、時代区分による弾き方の違いとか、もう一段階上のことを説明したいみたいだった。

例えば、バッハを弾く場合、ロマン派のようにペダルを使って弾きたいのか、原点回帰でその時代の奏法で弾きたいのか、自分で決めないといけない、とか。

あのね、そこまで考えられたらもう、プロのピアニストの領域だと思うんだけど。

阪神ファンの聖地・甲子園でレッスンというだけで満足

結局、私のレベルがもっと高かったらこの先生は最適の先生なのかもしれない。

そして最後のほうはかなりリラックスして話しておられたから、噛めば噛むほど味のでる先生なのかもしれない。

じゃあ、お名前は「鴎外するめ先生」としておこうか。

とりあえず、私はきょう、阪神ファンの聖地・甲子園でレッスンが受けられただけで満足することにしよう。

この先もアドバイスレッスンを受けるかどうかはわからないが、いい経験になった!