夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

映画「コーダあいのうた」と「エール!」の米仏音楽対決

フランス映画「エール!」の英語リメイク版「コーダあいのうた」

「エール!」と「コーダあいのうた」の音楽に焦点

2021年の米・仏・カナダ合作映画「CODA あいのうた」(原題:CODA)はフランスで大ヒットした2015年の映画「エール!」(原題:La famille bélier)のリメイク版ということだ。

私は数年前に「エール!」を見ているので、この2つを比較してみるのも面白いかと思い、記事にすることにした。

映画のストーリーは端的に言えば、ろう者の家族にたったひとり生まれた健常者の女子高校生が、音楽教師から歌の才能を見出され、やがては家族の元から巣立って、音楽大学への進学を目指す、というものである。

この映画にはろう者の問題、家族の問題とその気になれば、掘り下げようがいくらでもあるかと思うが、そういうシリアスな観点は他の専門家サイトにお任せしようと思う。

私が面白いな、と思ったのは、思春期の女の子が歌うのにふさわしく、かつフランス人(エール!)、またはアメリカ人(コーダ)みんなが知っている歌というのは、やはりその国によって違うな、ということなのだ。

さわやかな「You'are all I need to get by」

「コーダ」で主人公のルビーとボーイフレンドが、音楽会でデュエットで歌うのはマービン・ゲイとタミー・テレルの「You'are all I need to get by」。

元歌はR&Bの香りがするが、映画でこのふたりが歌うとさわやかで若々しい印象。

「一目みただけでキミが運命の人とわかった・・・」なんて、まるでロミオとジュリエットみたいである。

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ミッシェル・サルドゥーの「Je vais t'aimer」の情熱

一方、「エール!」で主人公のポーラとボーイフレンドが歌うのは、ミッシェル・サルドゥーの「Je vais t'aimer」(君を愛す)。

私はサルドゥーが大好きだが、それでも彼の詩的表現を充分に理解しているかというと、ちょっと自信がない。

「サド侯爵たちを青ざめさせるくらい、ジェリコの壁を震わせるくらい君を愛す」

なんてよくわからないが、そんじょそこらの安っぽい愛でないことはわかる。

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サルドゥーの「Je vole」(飛び立つ私)はこの映画にぴったり

場面変わって主人公が音楽学校の入試で審査員を前に歌う場面。

フランス映画の「エール!」ではここでもサルドゥーの歌で、「Je vole」(飛び立つ私)である。

「大好きなお父さんお母さん、私は旅立つわ。

あなたたちを愛しているけど、私は旅立つわ。

逃げるのではなくて、飛び立つの」

この場面でこれ以上、ぴったりの歌は見つからないと思う。

まるでこの歌を使いたかったから、この映画をつくったのではないかと思うほどだ。

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英語版で歌われる「青春の光と影」

しかし英語版も負けてはいなかった!

「コーダ」のこの場面で歌われたのは、ジョニー・ミッチェルの「青春の光と影

(Both sides, now) だったのだ!

1960年代後半にこの曲がどれほど世界的に流行ったかは、ウチにもシングル盤があったことから押して知るべし、なのだ。

レコードは姉が買ったものだろうか?

私は当時、歌詞の意味はさっぱり意味がわからなかったが、メロディーが好きでどれほど繰り返し聴いたかわからない。

歌詞の意味がわかった今では、さらにいい曲だと思う。

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主人公の歌唱力比べ

結局、フランス版,も英語版も、見て損はない良作といえると思うのだが、主人公の歌唱力について一言。

フランス版で歌ったルアンヌ・エメラ(Louane Emera) は、のど自慢大会から勝ち上がってきた歌手だけに、歌唱力は英語版のエミリア・ジョーンズより上回るのではないか?

こんな声を普通の高校の音楽室で聞いたら、誰もがのけぞると思う。

それに比べると、エミリア・ジョーンズはちょっと迫力に欠けるかもしれない。

もっともこれも好みがわかれるだろうが。