大ヒット映画「最強のふたり」は2度見てもいい映画
先日、NHKBSで放映されていた映画「最強のふたり」(原題 Intouchables)はフランスでの歴代観客動員数第3位、日本で公開されたフランス映画の歴代第1位を記録した大ヒット作である。
この映画は実話がもとになっていて、モデルの一人、大富豪で事故のため、首から下が不随だったフィリップ・ポゾ・ディ・ポルゴ氏は今年の6月に亡くなっている。
映画のなかでは「医師によれば70くらいまで生きられるそうだ」と言っていたが、実際の享年は72歳だった。
お兄様によれば昼夜を問わず、耐え難い苦しみに苛まれていたそうだったから、最後はせめて安らかなものであったと信じたい。
もちろん映画には彼の身体的・精神的苦痛は強調されていない。
お涙ちょうだいでもまったくない。
全体がユーモアがつつまれていて、それでいて富と貧が二極化されている現代社会もしっかり描かれ、明日への希望にも満ちていて、2度みてもまったくいい映画だなぁと思う。
映画「最強のふたり」あらすじと予告編
ここでまったくこの映画のことをご存じないかたのために、あらすじをザックリご紹介。
パリ7区の豪華なアパルトマンに住む大富豪、フィリップはパラグライダーによる事故のため首から下がまったく動かせない身障者。妻を難病で失くし、性格も気難しく、彼の介護人は長続きせずすぐやめてしまうのだが、失業手当が目当てで応募してきたスラム街出身の黒人青年、ドリスをなぜか採用。
車椅子の身障者の世話などまったく経験のないドリスだったが、身障者として憐れまず、普通に接する態度にフィリップは救いを見出す。
そんなときフィリップには恋する文通相手がいるのだが、自分の障害が打ち明けられずに悩んでいることを知ったドリスは・・・
ドリスのクラシック音楽批評
ちょっと一般的すぎる図式かもしれないが、富豪のフィリップが好む音楽は、ヴィヴァルディ、バッハ、いわゆるインテリが好むといわれるクラシック。
貧民のドリスが好むのはバリー・ホワイトとアース・ウィンド・アンド・ファイアーで、彼によれば「踊れない音楽は音楽じゃない」。
このドリスにフィリップがクラシック音楽を聞かせ、それにドリスらしいコメントを発する以下の場面が秀逸。
- ヴィヴァルディ四季より「夏」➡ドリスは「Putain!」(ちぇっ)と言い放つ。
- バッハ無伴奏チェロ組曲第1番➡ドリスは「知ってるよ、コーヒーのCMじゃん」
- バッハ管弦楽組曲第2番➡馬上の騎士のマネをするドリス
- バッハチェンバロ協奏曲第5番第2楽章➡「裸の人が踊っているみたい」というドリス
- ヴィヴァルディ四季より「春」➡職安の電話保留音の音楽で、これを知らない人はいないというドリスのモノマネ➡「こんにちは、こちらASSEDICです。ただいま全線でつながりにくくなっており、待ち時間は約2年です」
- リムスキー・コルサコフ「熊蜂の飛行」➡ドリスは「トムとジェリーじゃん!」
ドリスおすすめの「ブギ・ワンダーランド」
フィリップのイチオシのクラシック音楽につきあったあと、ドリスは
「さあ、こんどはオレの音楽を聴いてくれ。違うだろ?」
とアース・ウィンド・アンド・ファイアーの「ブギ・ワンダーランド」にのせて踊りだすドリス。
フィリップも
「確かに違うね」と笑う。
踊るドリスにそれまでかしこまっていた使用人たちも踊りだし・・・何度見ても楽しい場面である。
そしてこの映画を機会にスターダムに駆け上がったオマール・シーの魅力が全開のシーンでもある。