クラシックとその他の音楽は相反するか?
先日、ジャズピアノのレッスンで、師から
「ほんまに最近は、ようなったなぁ。
そやけどクラシックのほうは大丈夫なんか?」
と問われた。
つまり私のジャズピアノは以前より進歩したが、そのとばっちりを受けてクラシックピアノの腕前が後退したのではないか、とご心配いただいたようである。
ご心配はありがたいが、私史上、クラシックピアノがバリバリ弾けた時代はまったくないし、かりにジャズをやっていなくても、クラシックピアノがうまくなったとは思えない。
しかし、師からこういうことを問われるとは、両者はもともと相反するものだろうか?
もし、あくまで仮定法なのだが私がクラシックの道を究めたいと思えば、ジャズやポップスなんかは弾かないほうがいいのだろうか?
疑問に答えるドイツ映画「4分間のピアニスト」
この疑問に答えるかのような映画があったことを思い出した。
2006年のドイツ映画「4分間のピアニスト」(原題:Vier Minuten)である。
この映画はドイツではさまざまな賞を獲得するなど、大変評判が高い映画らしい。
まずドイツが誇る、ドイツの作曲家の名曲の数々が聴ける。
冒頭は確か、モーツァルトのソナタ12番K332 第2楽章、アンダンテの天国のような調べ。
でもこの映画の暗い色調にいちばん似合っていたのは、シューマンのピアノ協奏曲Op.54である。
内容は、ざっくり一口に言えば、殺人罪で刑務所に入所している元天才ピアニストのハンナと、彼女の才能を見込んで、ピアノを教える孤独な女性教師の魂のふれあい、といったところか。
ここでこの映画を観たことがないが、興味をもたれたかたに一言。
どちらかと言えば暗いよ。
ハンナはキレやすい性格なので、暴力的なシーンもあるよ。
ハリウッド的な勧善懲悪物語に慣れたかたには、違和感があるかもしれない。
ニグロの音楽はどうして禁止なのか?
しかし私にとって最も違和感があったのは、ピアノ教師であるクリューガーがことあるごとにハンナに、「ニグロの音楽はやめなさい」と言っていたことだった。
ハンナはフリージャズっぽい音楽も弾くのだった。
ところで「ニグロ」は字幕だったのかどうだったのか、今でははっきり覚えていない。
しかし、「え? そんな言葉使っていいの?」とドキっとしたのを覚えている。
どうしてクリューガーはこんなことを言っていたのだろう?
- 黒人に対する差別だった?
- モーツァルト、シューベルト、シューマンなどの正しいクラシック音楽に比べると邪道だったから?
- 邪道の音楽に触れると、「朱に染まれば赤くなる」同様、ピアニストとしての質が落ちるから?
たぶん2と3の両方だったと思う。
1の意味ではないと思うけどね。よくわからないがなんとなく。
ところで私自身、クラシックとその他の音楽については、こんな風に例えられると思っている。
クラシック=英語(世界の共通語だし、就職には欠かせない)
ジャズをも含めたその他の音楽=英語以外の語学(知る必要は特にないが、知ると価値観が拡がる)
ハンナが選んだ自分の音楽
最終的にハンナは自分の音楽として何を選んだか?
この答は最後の4分間にある。
だから「4分間のピアニスト」なんだろうね。
邦題としては悪くないほうだと思う。
下の動画はその圧巻ラストシーンだが、ネタバレOKの方のみご覧ください!