ムッシュー先生に整骨院を紹介された
先日、いつものようにフランス語の個人レッスンに行ったところ、ムッシュー先生から
(これもいつものように)
「Quoi de neuf?」(最近どう?何かあった?みたいな感じか)
と聞かれたので、
「相変わらず、肩や腕が痛いんです。整形外科に通っているのですけれど、全然良くならなくて・・・」
という世間話をした。
ムッシュー先生は、
「そういう整形外科じゃなくて、整骨院(はっきり日本語で言った)に行ったら?」
「鍼とかお灸ですか?私、ああいうの、怖くてやったことないんです。それに、ああいうところって保険が効かないから高いですよね?」
「まぁね。でもボクの知っているところでいいところがあるよ」
と診察券まで見せてくれたのが、整骨院初体験のきっかけである。
「いっぺん、試してみたら?ボクの紹介だというと、réduction(割引)があるかもしれないし」
えべっさんに誘われたのか?
もちろんその整骨院に行く前に、そこのホームページのお問い合わせフォームから自分の症状などを詳しく報告した。そしたら私の文章の10倍ぐらいの長さで、詳しい説明文が返ってきた。
整骨院の場所は「福男」「えべっさん」で知られる西宮神社のほぼ門前である。ひょっとしたら今年、初詣にここに来たので、えべっさんが「おいで、おいで」をしたのかもしれない。
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あっという間に鍼とお灸
さて初めて訪れた整骨院では女性の担当者が、懇切丁寧に説明しながらマッサージをしてくれた。
このマッサージは整形外科で理学療法士嬢がやってくれたような「痛い」ものではなかた。
しかし、これは彼女に責任があるのではなく、私の肩の状態は、一時のひどい状態を過ぎ、筋肉が固まってしまった、いわば膠着時期に入ってしまっていたからかもしれない。
気持ち良いマッサージのあいだ、私は「鍼とお灸を経験すべきか?」について悶々と悩んでいた。あらためて施術の前に「鍼とお灸を施術してもよろしいですか?」と聞いてくれるものだと思い込んでいたのだ。
ところが鍼灸師さんは、「ではこれからハリに移ります」と言い、「チクっとしますよ」ともいわず、私の肩をサッサとアルコールで拭いたのち、「コンコン」と何かを刺した!
ギャーッ これって鍼、ハリやのん???
私は火ダルマになるのか?
1回目の鍼は刺したらすぐ抜いたようでホッとした。
しかし2回目は・・・
自分から見えないし、見えたとして見る勇気がないのだが、どうやら鍼とお灸がダブルになっているみたいだった。
何かが燃える匂いが漂い、私の肩上には煙がムクムクと湧き上がっている。
私は恐怖に震えた。
なぜか鍼灸師さんは、席をはずしてしまっている。
もしこのまま火ダルマになったらどうしよう!いつ声を上げればいいのか!
バッハ大先生が助けに来てくれた
ふとそのとき、それまでBGMでかかっていた特徴のない弦楽四重奏が、いつのまにかピアノに代わっているのに気が付いた。
これは!
これはバッハやん! パルティータか?と思うけど?
私は救いの神のようなバッハの旋律をひたすら耳で追った。
右手の主旋律があらわれ、そして消える間際に左手が語りかける。
「そうおっしゃいますけど、実はあれには事情が・・・」
右手、また反駁する。
「確かにワタクシ、こみいった事情は存じあげませんことよ。でも・・・」
左手:
「しかし奥様、お察しいただけますでしょうか?」
まるで気位の高い貴婦人と老獪な紳士の対話みたいだ。
そんなことをあれこれ妄想しているあいだに、煙はしだいに消え、いつのまにか鍼灸師さんが現れ、さっさと鍼を抜き始めたのだった・・・
さて、鍼灸の効果があるかどうかは今のところ、わからない。
しかし音楽というものは、人間の恐怖、痛み、苦しみを和らげる効果があることを身をもって体験した。
私の恐怖を鎮めてくださったバッハ大先生、心よりお礼申し上げます。
これからも、先生の作品を少しずつでも弾いていくからね!
気を長~くして待っててね!