夢でささやくピアノ

クラシックピアノとジャズピアノの両立を目指す、ねむいゆめこの迷走記録

映画「幸せへのまわり道」でトム・ハンクスが伝えたかったもの

2019年のアメリカ映画「幸せへのまわり道」(Mister Roger's Neighborhood)

タイトルに「幸せ」がつくありきたりの、ありきたりでない映画

「2019年の映画をNHK BSで放映するなんて、ちょっと早すぎやしないか?きっとあまり人気がないのだろう」と最初は期待しなかったのが、アメリカ映画「幸せへのまわり道」(Mister Roger's Neighborhood)だった。

だいたい、洋画の題名ときたら、昔は「哀愁の~」がつくのが多かったが、最近は「幸せの~」が多すぎる気がする。配給会社はもうちょっと芸がないのか?

しかし主演俳優は名優のトム・ハンクスだ。

まかり間違っても駄作ではあるまい、と思ってみたのが正解だった。

けれどもこの映画のもととなり、子供向け番組で伝説的な人気を博した実在の司会者、フレッド・ロジャース(Fred Rogers)を知っているのと、知らないのではこの映画の楽しみ方はずいぶん違うだろう。

もちろん私はこのかたのことを、映画を観るまでまったく知らなかったので、この映画が伝えようとしていることをどこまで理解できたのか、はなはだ自信がないのだが。

「幸せへのまわり道」のざっくりあらすじ

それではここで「幸せへのまわり道」のざっくりあらすじをご紹介

才能はあるが、皮肉屋で心に傷をもつジャーナリスト、ロイド(マシュー・リス)は上司から、子供向け番組の司会者として絶大な人気を誇る有名人、フレッド・ロジャース(トム・ハンクス)を取材するように命令される。最初、この人物にまったく共感を覚えなかったロイドだったが、じつはフレッドはロイドの発する何気ない言葉、動作から彼のトラウマを見破り、そこから抜け出て希望をもつように示唆する驚くべき人物だった・・・

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ピアノもよくしたフレッド・ロジャース

この実在の人物、フレッド・ロジャースは映画の最後のほうでちょこっと映像がでてくる。

フレッド・ロジャース(1928-2003)

YouTubeでも当時の子供向け番組が多くアップされているが、その動画を貼った記事はことごとく財団から削除されているようなので、今回貼るのは諦めた。

しかしそれらの動画をいくつかみたところ、柔和な語り口、澄んだ目から、彼の子どもに対する愛情には間違いがなく、いかにも表裏のない純粋なお人柄のように見受けられた。

彼はピアノもよくし、実際に映画では自宅で妻と共に2台のグランドピアノで演奏を楽しむ場面もでてくる。

しかし残念なことに、YouTubeを探し回ってもこのときの映像はでてこなかった!

とっても残念!

何かを語ろうとしたトム・ハンクスの演技

ところで名優、トム・ハンクスのことだから、本物のフレッド・ロジャースを彷彿とさせる演技ぐらい、しようと思えばできたはずである。

しかし私の印象ではなぜか、映画中のトム・ハンクスの目には、純粋だけではない、他人の心を見透かそうとする意図的な何かを感じ取ってしまった。

どういってよいかわからないが、腹に一物のある、存外クセのある人物のように思えてならないのである。

その証拠(?)というのではないが、番組の収録が終わったフレッドがひとりピアノに向かう場面がある(下の動画の 0:45 あたりから)。

最初は静かなメロディーを奏でていたのだが、1:45あたりで、突如とんでもない不協和音をガーン!と鳴らし、おまけにゲンコで鍵盤を叩いたりするのだ!

そしてややあって、また平和的なメロディーに戻る。

やっぱりここのところで、トム・ハンクスはこの主人公はいわゆる「聖人」ではなく、私たち凡人と同じように、怒りに似た感情に身を任せることもあったことを表しているのでは?と思ったりするのだが、考えすぎだろうか・・・

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