フランク・ロイド・ライト設計の重要文化財
兵庫県芦屋市にはこれといった観光名所がない。
たとえば背の高いタワーとか、由緒あるお寺とか、巨大なショッピングモールとか。
もし誰かに芦屋市を案内してほしいと頼まれたら、私は本当に困るだろう。
その少ない観光名所のひとつに、国の重要文化財に指定されている「ヨドコウ迎賓館」がある。
現在の所有者が淀川製鋼所(ヨドコウ)であるため、この名称になっていると思われるが、これ、何となく気になる・・・
というのもヨドコウが物置の製作会社として有名であるため、夫ちゃんに、
「ガレットを食べた後は、ヨドコウ迎賓館でやっている雛祭り展を見に行こう!」
といっても、
「なんでわざわざ、物置のでっかいのを見に行くのか」
と最初は相手にされなかったからである。
なので私は、この屋敷は今から100年前、大金持ちの造り酒屋(櫻正宗)の経営者が、近代建築家のひとりに数えられるフランク・ロイド・ライトに設計を依頼し、作られたものであることを説明しなければならなかった。
フランク・ロイド・ライトの数奇な人生
建築学の観点から言えば、私の写真よりもっと素晴らしい写真が見られるサイトが多くあるし、ライトの設計がどんなにすばらしいか、についてもちゃんと説明されている。
ヨドコウ迎賓館「旧山邑家住宅」フランク・ロイド・ライトの名建築 - SMILE LOG
なので、今さら私がその説明を転記するのも野暮であろう。
だから私が興味をもっているのは、建築の価値よりも、ライトその人の数奇な人生である。
ウィキペディアをざっと読んだだけでもいかにスキャンダラスな人生だったかが想像される。
現代のネット時代ならとっくに炎上を通り越しているだろう。
その人生におきた悲劇をかいつまんでいうと、
- 6人の子供をもうけた夫人が離婚に応じなかったため、愛人と駆け落ち
- 彼の留守中に、使用人が建物に放火し、愛人と子ども2人が斧で斬殺される
- 犯人の使用人は犯行動機を語らず、獄中で餓死
いや、もうコワすぎるわ・・・
旧山邑家邸(ヨドコウ迎賓館)の設計にライトがとりかかったのは、1924年だからこの悲劇のあとである。
ライトさん、本当にがんばったのだなぁ。
ところで1924年(大正13年)と言えば、芦屋市のこのあたりにはほかに家がなかったのだろう。
ところが今はこの建物よりも山側に、びっしりと住宅が建てられているため、説明書きにあるように「高台」にあるとはあまり感じない。
ライトさん、今の芦屋市をみたらびっくり仰天するだろうね。
雛祭り展よりピアノでサロンコンサートを!
この「ヨドコウ迎賓館」、何といっても100年前の建物だから管理・維持するのはとても大変なのだろう。
だから会社の名を冠して、少しでも宣伝になるように、というのもわかる。
しかしせっかくの文化財なのだから、ピアノをおいて、クラシックのサロンコンサートを開いたほうが、1年中企画できていいのではないか?
「雛祭り」だと1年に1回しかないし、展示品の規模も大々的に謳うほど規模は大きくないのだから。
なあんて文句ばっかり言っているが、100年前の豪商の生活ぶりがうらやましくなるすばらしい邸宅であることは間違いない。