私の手は小さくないと思っていたが
何となくではあるが、私の手は大きくはないが、小さくもないと思っていた。
根拠はない。
かろうじてそれらしきものがあるとすれば、身長(164cm)も足(24.5cn)も、同世代の女性に比べれば大きいほうだからである。
でもどうして身長と足が大きいと、手も大きいだろうと推測していたのだろう。
たぶん子どもの時から、まわりの級友をそれとなく観察した結果、そう思ったに違いない。
だから新しいクラシックピアノの先生は小柄で、とても華奢な体つきなので、手は大きくないだろう、と思い込んでいた。
ちなみに前の先生、前の前の先生も、見るからに私より手が小さかった。
しかし今の先生については、とんでもない見込み違いであることに気がついた。
バッハ先生のけいりゅうおん(掛留音)が弾けない
今やっているバッハ フランス組曲2番アルマンドの下記、2段目の赤丸のところ、つまりドからヘ音記号の♭シまでの長9度が先生はらくらく届くのだ!
私はこの音程についてはハナから諦めていた。
「こんなん届かへんし、それに届かへんかて別に大勢に影響ないし」
と思っていたからである。
ところがこれは大きな間違いであった。
このドの音は2段目の1小節目の和音、B♭mにない音、つまり非和声音である。
このドは前の小節の和音、Fmから続いているから、けいりゅうおん(掛留音)である、ということを教わった。
つまりバッハ先生はある効果を狙って、この音を配置したのであるな?
私のアドリブじゃあるまいし、いきあたりばったりにこの音にしたのではないのだ。
「届かないんじゃ、しかたないですねぇ」
と先生は言った。
「先生の手って、大きいんですね!」
「大きいですよ。だからピアノを選んだんです」
と先生は涼しい顔でこう言われた。
長9度をとどかせるためのコツというか裏ワザ
でも「悔しいなぁ」と思い、家に帰ってから何度か届くように試してみた。
するとあることに気がついた。
下の左写真のように、まともに白鍵を通常の位置で押していたのでは、まったく♭シまで届く気配もないが、右写真のように、ちょっと白鍵にひっかけるように、1と2の指のあいだを拡げるように意識を変えたら、あーら、届いたのだ!
つまりコツがあるとすれば、
- 白鍵のまんなかではなく、端っこをひっかける
- 手全体を拡げようとするのではなく、親指と人差し指のあいだを直角以上に拡げる意識をもつ
ではないだろうか?
ストレッチはそこそこに
これでいい気になって手を拡げる練習を続けていたら、手の甲かどこかを痛めていたかもしれない。
そこまでは熱心にやらなかったおかげで、3日もしないうちにこの長9度が届くようになった。
これも体のストレッチと同じなのかなぁ。
つまりやらなかったら絶対に届かない。
やったら、ひょっとしたら届くようになるかもしれない。
あくまで、かもしれない、だが。
ただしやりすぎは禁物。
ゆるーく、ほどほどに、そこそこに、試してみることをおすすめしたい。