アメリカ大統領とアラブの族長の対決
1975年のアメリカ映画「風とライオン」の「風」とは第26第アメリカ大統領セオドア・ルーズベルトを指し、「ライオン」とは20世紀初頭のモロッコに存在したベルベル人の族長、ライズリーを指すらしい。
物語はこのライズリーがモロッコに対する列強の干渉への抗議の意味で、アメリカ人女性イーデンとその子供たちを誘拐する場面からはじまる。
この誘拐事件は実際にあったそうだが、その後の展開は創作が多いらしく、そのへんがこの映画が「歴史アクション大作」と喧伝されるゆえんかもしれない。
でも私にはおもしろかったよ。
アラブの盗賊たちが剣をかざしながら砂漠を馬で爆走する場面なんか、ちょっと「アラビアのロレンス」を思い出した(長すぎてもう一度見ようとは思わないが)。
そして預言者ムハンマドの血をひく砂漠の王者、ライズリーを演じるショーン・コネリーがはまり役!!
ボンド以外にこんなにピッタリの役が彼にあるとは思わなかったよ。
つまり信じるのはアラーの神のみであるにかかわらず、どこか人間臭く、憎めない男。
無礼を働いた男たちは斬殺するくせに、「女子供には手をださない」のが彼の信条。
誘拐されたアメリカ人女性、イーデンも最初は反発していたが、そんな彼と次第に心を通わせるようになり・・・あ、これって「王様と私」のような展開になるのか!?と思ったら、よかった。
ロマンスはなし(ここでロマンスありだったら、B級映画になってしまう)
「風とライオン」予告編
トランプさんみたいなルーズベルト大統領
しかしこの映画でなにが印象に残ったかというと、アメリカ大統領、ルーズベルトなのだ。
実際のルーズベルトがどんな大統領だったかはまったく知らないけど、この映画をみたら、「あれ、トランプさん?」と思うぐらいなのだ。
これってアメリカファーストだよね。
再選を目指すルーズベルトはこの誘拐事件を自らのプロパガンダとして利用するのだ。
彼によるとアメリカは尊敬される(べき)。
そして怖れられる(べき)。
しかし他国からは愛されないそうだ。
別に愛されなくてもかまへん、ということであろう。
私はトランプさんって歴代の大統領と違って、突然変異的にあらわれたのかなと思っていた。
でもこの映画を観る限り、ルーズベルト大統領の言動をちょっと過激にしただけで、大統領の王道ははずれていないのでは、と思った。
ひょっとしてトランプさんもルーズベルトにあやかりたいと思っているのか?
味方より敵のほうが友になるとは?
またルーズベルトの娘が、
「パパは本当はライズリーが好きなんでしょ」
と聞く、
するとルーズベルトは
「味方より友になる敵もいる」
と言うのだ。
これもトランプさんに似ていない?
だってトランプさんは、同じ自由主義陣営のトルドー首相(カナダ)やマクロン大統領(フランス)より、プーチンさんと気が合うみたいに思うから。
相性で政治が決められるとたまらないけど、人間ってそんなものなのだろうか。