コルコヴァドとは巨大なキリスト像が建つ丘
近ごろ恒例のようになってしまったジャズ友たちとの、ライブハウスでのセッション参加。
お互いにやりたい曲、ギターや鍵ハモ、もしくはパーカッションでいっしょに参加してほしい曲などをグループラインでやりとりしている。
私が次回、ピアノでやりたい曲としては「コルコヴァド」。
だってこの頃の暑さって半端じゃないでしょ?
でも「コルコヴァド」を聴くというか、弾くと、リオデジャネイロの涼しい風がすぅーっと吹いてくるような気がするのだ。
あくまで気、だけど。
この「コルコヴァド」(Corcovado)はアントニオ・カルロス・ジョビンによるボサノバの名曲。
ところがなぜか私は長いこと、この曲のイメージとしてブラジルの浜辺を思い浮かべていた。
どうやら「コパカバーナ」と混同していたらしい。
ところがコルコヴァドとは、巨大なキリスト像がたつあの丘、のこと。
そしたらどうしてこの歌の題名はコルコヴァドなのか?
この曲にはポルトガル語と英語の歌詞の両方がつけられており、残念ながら私にはポルトガル語は理解できない。
でも英語の歌詞だと、
... and a window looking on the mountains and the sea
How lovelyThis is where I want to be
Here with you so close to me
Until the final flicker of life's ember
という箇所があるから、
「窓からは山と海が見えてなんでステキなんでしょう。
ここは私が望んでいた場所、人生が燃え尽きるその日まであなたの近くですごしたい」
とあるから、窓から山と海が見える場所=コルコヴァド、ということでいいのかな?
ジョビンのシンプルなピアノが心に響くコルコヴァド
さてこの曲はもう、それこそ星の数ほどのカヴァーが存在し、どれを例にして良いかわからない。
まず、本家本元のジョビンでしょ。
このヴァージョンは私が昔から聴いていたもの。
若いころはジョビンのピアノを聞いて「これぐらいやったら私にも弾ける!」と思ったものだ。
なんと「昔はものを思はざりけり」だったことよ。
アストラッド・ジルベルトが英語で歌うQuiet nights of quiet stars
そしてアストラッド・ジルベルトの歌も忘れてはならない。
彼女が歌っているのは、「Quiet nights of quiet stars~静かな夜~」というタイトルで知られる英語版。
イチ推しのオスカー・ピーターソンのコルコヴァド
だいたいのひとはこの歌に限らず、インスト物より歌物のほうが好きだろう。
やはり歌詞があるからね。
歌詞の内容で心にぐっと刺さるか、そうでもないかの分かれ道になることもあるから。
ところが私の場合、この曲でいちばん好きなのはオスカー・ピーターソン盤なのだ。
ピーターソンというとやはり超絶技巧でしょ。
鍵盤の端から端までバラバラバラ!!!と弾きまくっているのが多い。
とくにライブでは、その傾向が顕著であるように思う。
でもコルコヴァド(Quiet nights and quiet stars 静かな夜)では違う。
彼がもっている技巧の60%ぐらいしかおもてに出していないのに、アップテンポにのせたトリルのような細やかなピアノの音がなんと美しいこと!
まるで本当に星がキラキラとまたたいているようだ。
あんまりキラキラなので quiet stars とはいいがたい気もするけど。
まるで星同志がおしゃべりしあっているようにも聞こえるけど。
何度も言うようだが、聴くたびにすごい!と思う。
そして何年かかってもこんな風に弾ける日はこない、と思うと諦めの境地に陥り、「まぁ、練習してもせんでもいっしょかも?」という気持ちになるのだ。