東西冷戦映画「ホワイトナイツ/白夜」とは?
この映画の主題歌、「セイ・ユー・セイ・ミー」は1985年の大ヒット曲だ。これを歌ったライオネル・リッチーはそのころ、数々の賞を総ナメにしたので、この曲のことはよく覚えている。しかし、どうしてこの映画は観なかったのかなぁ。不思議だが、本でも映画でも、出会うべきとき、というのがあるのだろう。いずれにせよ、1980年代にはまったく私の興味を惹かなかったこの映画は、2022年に私が観たベスト映画になった。
この映画のあらすじを端的にご紹介すると、
芸術の自由を求めて、ソ連からアメリカに亡命したダンサー、ニコライ(ミハイル・バリシニコフ)は講演旅行中に乗った飛行機がシベリアに不時着したため、心ならずもソ連でKGBの監視下に置かれてしまう。そこにはアメリカを捨てソ連に亡命した黒人のタップダンサー、レイモンド(グレゴリー・ハインズ)が、モスクワ生まれの妻と自由を奪われて生活していた。最初は反発しあった二人だが、ダンスを通じて心を通わせるようになり、極秘のソ連脱出計画に命を賭ける決心をしたのだが・・・
この映画のみどころはずばり3つ!
ダンスの基本は同じなのか?
私はダンスについては門外漢なので、的外れなことを言っているのかもしれないが、バリシニコフとハインズはそれぞれ出発点がクラシックバレエ、タップダンスと分野は違うが、基本は同じではないか、と感じた。
体の柔らかさ、キレキレッのリズム感、そしてフロアを駆け回るスピードの速いことには驚かされる。何度でもみてしまい、できるものなら真似したいよ。
バッハ:パッサカリアとフーガが現代バレエにピッタリ!
話は前後するが、この映画の冒頭、バリシニコフが踊る「若者と死」というジャン・コクトーが台本を書いたバレエが紹介される。これが従来のお姫様と王子様が主人公のバレエとはまったく違った、いい意味で斬新、悪く言えばちょっと気色が悪い。この映画を観続けるのをやめようと思ったぐらいだ。
しかしこのバレエの音楽はバッハの「パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV582」なのだ!17世紀に書かれた音楽が、現代バレエ、それもちょっと引いてしまうようなテーマにぴったりあうとはまさに不思議ではないか?もともとオルガンの曲だが、ピアノにアレンジされたのもあるようだ。弾いてみたいかと問われれば、ちょっと躊躇してしまう。雰囲気があまりに暗いので。
やっぱり聴きたい主題歌の「セイ・ユー・セイ・ミー」
この映画がつくられたのは1985年、東西冷戦の時代だった。しかしたった4年後、ベルリンの壁が崩壊し、一応冷戦の時代は終わった。けれども2022年の漢字が「戦」ということは、「冷戦」は終わってもちっとも「戦」はなくなってないという証ではないか?!だからこの映画は全然古くないし、この主題歌もまったく古さを感じさせない、いい曲だなぁと思うのだ。